オースチン・マキシ

オースチン・マキシ：ブリティッシュ・レイランドの意欲作と、その苦悩

[ブリティッシュ・レイランド]のオースチン部門が1969年から1981年まで製造したオースチン・マキシは、5ドアハッチバックの乗用車で、前輪駆動方式を採用していました。アレック・イシゴニスが設計を指揮した最後のモデルとして知られ、その革新的なデザインと機能は、発売当時大きな注目を集めました。

開発と発売

設計コードネーム「ADO14」として開発が始まったマキシは、当初「オースチン・1500」として販売される予定でした。しかし、BLMCの新経営陣の決定により、姉妹車として計画されていたモーリス版は後輪駆動の「マリーナ」として別途開発されることとなり、オースチン版は「ミニ」と対比的な「マキシ」という名称が与えられました。

1969年4月24日に発表されたマキシは、ルノー・16の影響が見て取れる流麗な5ドアハッチバックボディを持ち、広い室内空間を実現していました。リアシートは折り畳み式で、さらにリクライニングしてフロントシートと繋げることで簡易ベッドとしても使用可能という、当時としては画期的な機能を備えていました。5速ギアボックスを標準装備し、「5ドア・5速・5人乗り」というキャッチコピーで販売されました。BLMC発足後最初の新型車ということもあり、大きな期待を背負って市場に投入されました。エンジンは、当初1485ccのEシリーズエンジンを搭載していましたが、パワー不足の声に応え、1970年には1750cc版、1972年にはツインキャブ仕様の「HL」が追加されました。

販売不振と問題点

しかし、マキシは発売当初の期待に反し、販売面では苦戦を強いられることになります。その原因の一つとして、幾つかの技術的な問題が挙げられます。5速ギアボックスのシフトリンケージ不良や、イシゴニス式レイアウト特有の潤滑不良、クラッチオイル漏れなどが頻発し、ユーザーからの信頼を失うことになりました。これらの問題は徐々に改善されましたが、初期の評判を回復するには至りませんでした。

デザイン面でも課題がありました。コスト削減のため、以前のモデルで採用されていたピニンファリーナのデザインではなく、既存の部品を流用した結果、新型車らしい斬新さに欠けるデザインになってしまいました。内外装もシンプルで、高級感に欠けていたことも販売不振の一因と言えるでしょう。

改良と生産終了

販売不振を打開すべく、1980年8月にはマイナーチェンジを行い、「マキシ2」として発売されました。外観はバンパーやサイドモールなどが変更され、内装にも改良が加えられました。しかし、販売状況は依然として低迷し、1981年末に生産が終了しました。実質的な後継車種として、1983年にマエストロが登場しています。

日本での状況

日本市場においては、1969年にキャピタル企業がサンプルカーを輸入したものの、正式な販売には至りませんでした。

まとめ

オースチン・マキシは、革新的なデザインと機能を備えた意欲的なモデルでしたが、技術的な問題やデザイン面での課題、そして販売戦略の失敗など、様々な要因が重なり、商業的な成功を収めることができませんでした。しかし、その存在は、自動車史における重要な一ページを刻んでいると言えるでしょう。 マキシの登場は、後のハッチバックブームの先駆けとなった側面も持ち合わせており、その技術的な試みは、後のブリティッシュ・レイランドのモデルにも影響を与えたと考えられます。

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