オースティン・トラウト

オースティン・トラウト（Austin Trout）は、1985年 9月18日生まれ、アメリカ合衆国ニューメキシコ州ラスクルーセス出身のプロボクサーです。左構えの技巧派として知られ、プロボクシングではWBA世界スーパーウェルター級レギュラー王座を獲得し、名だたる強豪たちと拳を交えてきました。その後、ベアナックルボクシングの世界へ転じ、BKFCウェルター級王者にも輝いています。

アマチュア時代

トラウトはアマチュア時代からその才能を発揮していました。2004年には全米選手権のウェルター級（69kg）で優勝を飾り、将来を嘱望されます。同年のナショナル・ゴールデングローブでは準決勝まで進出しましたが、ダニエル・ジェイコブスに敗れました。また、アテネオリンピックの国内予選選考会を突破するも、国内最終選考会でバネス・マーティロスヤンに敗退し、オリンピック出場は叶いませんでした。2005年の全米選手権にも出場しましたが、準決勝でデメトリアス・アンドラーデに阻まれています。アマチュア戦績は206戦163勝42敗1分という豊富な経験を積みました。

プロキャリア

デビューと初期タイトル獲得

2005年9月16日、トラウトはプロボクサーとして第一歩を踏み出し、3回TKOで勝利を収めました。キャリア初期から着実に勝利を重ね、2009年にはWBAインターナショナルおよびWBAフェデラテンスーパーウェルター級王座を獲得。さらに、同年中にはWBCアメリカ大陸スーパーウェルター級王座も手にするなど、地域のタイトルを総なめにしました。これらのタイトル獲得が、後の世界挑戦へと繋がっていきます。

WBA世界王座獲得と防衛

2011年2月5日、トラウトはメキシコ・グアダラハラにて、空位となっていたWBA世界スーパーウェルター級レギュラー王座を懸けてリゴベルト・アルバレスと対戦しました。この試合に3-0の判定で勝利し、悲願の世界王座を獲得しました。王座獲得後も安定した強さを見せ、デビット・ロペスやフランク・ロポルト、デルヴィン・ロドリゲスといった挑戦者たちを退け、3度の防衛に成功します。

キャリアのハイライトと強豪との激闘

トラウトのキャリアにおける最大のハイライトの一つは、2012年12月1日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた元WBAスーパー王者ミゲール・コットとの一戦です。伝説的な強打者であるコットに対し、トラウトは卓越したボクシング技術でアウトボックスし、12回3-0の判定勝利を収めました。この勝利は多くのボクシングファンに強い印象を与え、トラウトの名声を確立しました。この勝利により、WBA王座の4度目の防衛にも成功しています。

しかし、王座は長く続きませんでした。2013年4月20日、テキサス州サンアントニオで開催されたWBC世界スーパーウェルター級王者サウル・“カネロ”・アルバレスとの王座統一戦において、12回0-3の判定負けを喫し、プロキャリア初の敗北と共にWBA王座を失いました。この試合は両者にとってキャリアの重要な転換点となりました。

王座陥落後もトラウトは強豪との対戦を続けました。2013年12月には、後のWBAスーパー王者エリスランディ・ララと対戦するも判定負け。再起後は勝利を収める一方、2016年にはIBF王者ジャーモール・チャーロ、2017年にはIBF王者ジャレット・ハード、2018年にはWBC王者ジャーメル・チャーロと、スーパーウェルター級のトップランカー・王者たちと立て続けに対戦しましたが、いずれも王座獲得には至りませんでした。これらの経験は、彼のキャリアに多くの学びをもたらしました。

プロボクシングの戦績は40戦34勝（18KO）5敗1分を記録しています。

ベアナックルボクシングへの挑戦

プロボクシングでのキャリアを積んだ後、トラウトは新たな挑戦の場を求めました。2022年11月、ベアナックルボクシング団体であるBare Knuckle Fighting Championship（BKFC）との契約を発表します。2023年2月17日には、元UFC選手のディエゴ・サンチェスを相手にBKFCデビュー戦を行い、4回TKO勝利を飾りました。

そして、2024年2月2日に行われたBKFC-57において、空位となっていたBKFCウェルター級王座決定戦でルイス・パロミノと対戦し、5回判定勝利を収めてBKFCウェルター級王者となりました。これは、プロボクシングに続き、異なる格闘技の舞台でも頂点に立ったことを意味し、彼のファイターとしての多様性と適応能力を示しています。

オースティン・トラウトは、プロボクシングの世界王座を獲得し、数々の強豪と激闘を繰り広げた後、ベアナックルボクシングという新たな分野で再び王座を手に入れた、異色のキャリアを持つファイターです。

獲得タイトル

WBAインターナショナルスーパーウェルター級王座
WBAフェデラテンスーパーウェルター級王座
WBCアメリカ大陸スーパーウェルター級王座
WBA世界スーパーウェルター級レギュラー王座（防衛4）
* 第4代BKFCウェルター級王座

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