オーダー (建築)

古典主義建築の基礎：オーダーについて

古典主義建築を語る上で欠かせないのが「オーダー (Order)」です。これは、独立した円柱（礎盤、柱身、柱頭）と水平梁（エンタブラチュア）から成る構成法で、建築デザインの基本単位として機能します。一般的には、トスカナ式、ドリス式、イオニア式、コリント式、コンポジット式の5種類に分類されます。それぞれのオーダーは、柱頭や柱身の装飾、そしてエンタブラチュアの構成に特徴があり、それらの組み合わせによって独特の雰囲気を醸し出します。

オーダーの歴史：古代から近代へ

オーダーの起源は古代ギリシア建築、エトルリア建築、そしてローマ[[建築]]に遡ります。古代ギリシアでは、伝統と深く結びついた重要な建築手法として発展し、神殿建築などに広く用いられました。しかし、ローマ帝国末期にはその重要性を失い、ビザンティン[[建築]]では早期に姿を消します。

西欧では、ルネサンス期に古典建築が「再発見」されるまで、コリント式など粗野な装飾が用いられる程度でした。ルネサンス期に入ると、オーダーは建築美の究極の姿として再評価され、建築家たちはオーダーの理想的な比例関係について熱心に議論するようになります。17世紀以降は、オーダーの絶対的な美しさに対する疑問が呈されるようになり、18世紀末には古典主義建築の記号としての側面が強調されるようになります。

各オーダーの特徴

トスカナ式オーダー: 最もシンプルで装飾が少なく、素朴な印象を与えます。ドリス式と類似する部分も多いですが、フルーティング（溝彫り）がないことや、柱頭部分の装飾が簡素であることなどが違いとして挙げられます。エトルリア建築に起源を持つと考えられています。
ドリス式オーダー: ギリシア建築で最も古いオーダーとされ、力強い印象を与えます。エンタブラチュアには、トライグリフとメトープという特徴的な装飾があります。男性的な力強さを象徴し、武神の神殿などにふさわしいとされました。
イオニア式オーダー: 渦巻模様が特徴的な優美なオーダーです。小アジアに起源を持ち、女性的な優雅さを象徴し、女神の神殿などに用いられました。
コリント式オーダー: アカンサスの葉を模した装飾が特徴で、最も華麗なオーダーです。繊細で装飾性に富み、少女のような繊細さを象徴していました。
* コンポジット式オーダー: コリント式とイオニア式の要素を組み合わせた、混合型のオーダーです。多様なバリエーションがあり、豪華さを表現するのに適しています。

オーダーの構成要素

オーダーは、円柱だけでなく、エンタブラチュアと呼ばれる水平梁部分からも構成されます。エンタブラチュアは、アーキトレーヴ、フリーズ、コーニスという3つの部分から成り立ち、それぞれに特有の装飾や構成要素があります。例えば、イオニア式のコーニスは、正シーマ、反シーマ、帯状面、軒持ち送り、オヴォロ、歯型飾り、そして玉縁などから構成されています。これらの装飾は、オーダー全体の美観に大きく貢献しています。

ジャイアントオーダー

複数階にわたって連続する大規模な円柱を「ジャイアントオーダー」と呼びます。これは、建物のスケール感を強調し、威圧感や壮大さを演出する効果があります。

オーダーと建築理論

ルネサンス期以降、オーダーの比例関係は建築理論の中心的な議題となりました。建築家たちは、ウィトルウィウスの『建築について』をはじめとする古代の文献や、ローマ時代の遺跡を研究し、オーダーの理想的な比例関係を追求しました。しかし、絶対的な美を追求する試みは18世紀後期以降、相対化されていきます。 建築における「美」の概念がより主観的、多様なものとして認識されるようになったためです。

まとめ

オーダーは、古典主義建築の基本単位であり、その歴史、構成要素、そして各オーダーの個性は、建築史において重要な位置を占めています。 建築様式の多様化が進んだ現代においても、オーダーは建築デザインに影響を与え続けています。それぞれのオーダーが持つ独特の美しさ、そしてそれらが織りなす建築全体の調和は、今もなお人々を魅了し続けています。

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