オート (文具)

オート株式会社：文具の歴史を彩るイノベーター

オート株式会社（OHTO CO.,LTD.）は、日本の文具メーカーとして、その革新的な製品と歴史を通じて業界に多大な影響を与えてきました。旧中田機化工業・オートボールペン工業をルーツとし、鉛筆型ボールペンや世界初の水性ボールペンを開発したパイオニアです。ブランド名も以前は「AUTO」でしたが、現在は「OHTO」と表記されています。

革新的な製品開発

1946年に「オートペンシル」という鉛筆型ボールペンを発売し、1951年には実用的なボールペンを他社に先駆けて販売しました。1943年に発明されたボールペンは、材質やインクの欠陥など多くの問題を抱えていましたが、オートはこれらの問題を克服し、世界で初めて水性ボールペンを発売しました。また、事務用品の開発も積極的に行っており、「ガチャック」や「メモクリップ」などの独自製品も開発しています。

オートは京セラの技術を採用したセラミックボールを使用した水性ボールペンや、ペン先が細長い円錐形をした「ニードルポイント」という油性ボールペンなど、独創的な製品を数多く開発・販売しています。「ニードルポイント」は、ペン先の形状が針の先端のように鋭いイメージから、NEEDLE（針）とPOINT（先端）の2つの言葉を組み合わせて名付けられたオートによる造語です。

他社が水性ボールペンのラインナップを大幅に縮小する中、オートは現在も新製品を積極的に展開しています。近年では、アイデア商品の開発にも力を入れており、2006年にはカラフルなマーブル模様のボールペンシリーズ「アメリカンテイスト」が人気を博しました。自動繰り出し型の「オートシャープペンシルシリーズ」や、2016年にグッドデザイン賞を受賞した温かみのある「木軸シャープペンシル」なども近年の代表作です。

現在では、筆記具の製造販売に加えて、世界各社へのOEM供給や、ギフト、ノベルティ商品の企画販売にも力を入れています。また、筆記具製造設備のプラント輸出も行っています。なお、部門分割された中田機械化工業は現在も存在しています。

沿革：技術革新の軌跡

オートの歴史は、1919年に中田藤三郎が設立した中田鳳華堂に遡ります。漢方薬の粉砕、高品質染料やインクの製造から始まり、1945年には中田粉砕化工株式会社に改組されました。1949年には、世界初となる鉛筆型木軸ボールペンを開発し、ボールペンブームの火付け役となりました。

1952年には、長期間の使用に耐えられる実用的なボールペンを開発し、1955年には中田機化工業株式会社に改名。1962年には、世界初となる鉛筆型ノック式ボールペンを開発し、オートボールペン工業株式会社に社名を変更しました。

その後も、超硬ボールの実用化（1963年）、インク残量がわかる中芯の開発（1964年）、世界初の水性ボールペン開発（1964年）など、数々の革新的な技術を開発しました。1974年には、ブランド表記を「AUTO」から「OHTO」に変更。1980年には、同社の代表的な製品である「ガチャック」を開発しました。

1981年には、ボール材にセラミックを使用した水性ボールペンを開発し、1999年には切削型ニードルチップや低粘度油性インクを開発しました。2006年には、ゲルインクにセラミックボールを使用し、2013年にはノンドライ水性リフィルを開発するなど、常に最先端の技術を追求し続けています。

製品の特徴：油性、水性、ゲル、シャープペンシル

油性ボールペン

オートは、戦後のボールペンブームの中で、持ちやすく書きやすいボールペンを追求しました。1949年に開発した鉛筆型木軸ボールペンは、世界で初めて「クロムボール」をペン先に採用し、インク漏れが少なく書き心地の良いボールペンを実現しました。1952年には、保存性と耐久性を高めたボールペンを開発し、1958年には世界で初めてペン先の0.6mmボールを開発しました。また、1960年には世界で初めて公文書用インクの前身である「証券用インク」を開発し、ボールペンが宮内庁・銀行・会社の事務用筆記具として広く認知されるようになりました。

1962年には、国内初の鉛筆型ノック式ボールペンを開発。1963年には世界初の「超硬ボール」を開発しました。1964年には、インク残量が見える中芯を開発しました。1978年には、世界初のラバーグリップ付きボールペンを発売。1999年には、低粘度油性インク「ソフトインク」を開発し、2012年には油性ボールペンとして初めて0.3mmを開発しました。

水性ボールペン

1964年、オートは世界で初めて「水性ボールペン」を開発しました。この水性ボールペンは、油性ボールペンの弱点であった書き味の重さやインク溜まりなどを克服し、特に万年筆文化が強いヨーロッパやアメリカなどの海外で人気を博しました。1981年には「セラミックボール」を開発し、ペン先にセラミックを採用した水性ボールペンを発売。1991年には、耐水・耐光性顔料インクを使用した直液式水性ボールペンを開発しました。

2013年には「ノンドライ機構」を開発し、水性リフィルのインク乾燥を防ぐことに成功。2017年には、ノンドライ機構搭載C-300リフィルを使用したノック式水性ボールペンを発売しました。2022年には、「セルサス」をフルモデルチェンジし「CR01」を発売しました。

ゲルボールペン

オートは、セラミックボールの技術をゲルインクボールペンにも応用し、2006年に「セラミックゲル」を開発しました。2017年には「フラッシュドライゲル」を開発し、筆記線の速乾性を向上させました。2023年には、SiCセラミックを採用し、耐久性とインクの乗りを向上させた「セラミックローラーゲル替芯」を発売しました。

シャープペンシル

1979年には、世界に先駆けてラバーグリップ付きシャープペンシルを発売。1980年には「オート鉛筆」を発売し、1981年にはピストン機構を取り付けた「ピストンシャープ」を開発しました。1995年には、製図用「プロメカ」シリーズを発売し、2005年にはボディーノック式のシャープペンを発売しました。2006年には、自動繰出し機能付きシャープペンシルを開発し、2018年には同ブランドのハイエンドモデルとして「ノノック」を発売しました。

ガチャック

1980年に発売された「ガチャック」は、オートの代表的な製品であり、書類を綴じる際に穴を開けずに使用できる文具として広く知られています。2018年には、一つの本体で複数のサイズの玉を使用できる「3WAYガチャック」を発売しました。

その他

オートは、その他にも「ニードルチップ」や「ゴムグリップ」「ローレットグリップ」などの独自技術を開発し、文具業界に貢献しています。また、万年筆の製造も行っており、様々なモデルを展開しています。

理念

オートのキャッチコピーは「ボールペンの歴史はオートの歴史、そして明日の歴史をつくる！」であり、サブキャッチコピーは「今でこそあたりまえをオートが開発しました。」です。常に革新的な技術と製品開発を追求し、文具を通じて人々の生活を豊かにすることを目指しています。

オート株式会社は、その長い歴史の中で培ってきた技術と革新的な発想で、これからも文具業界を牽引していくことでしょう。

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