オーフス条約

オーフス条約

オーフス条約（英: The Aarhus Convention）は、「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約」（英: Convention on Access to Information, Public Participation in Decision-making and Access to Justice in Environmental Matters）の通称です。これは、環境保護や持続可能な開発のため、市民が環境情報へのアクセス、意思決定への参加、司法アクセスを通じて主体的な役割を果たす権利を保障する国際条約です。

条約の背景と採択

本条約は、国連欧州経済委員会（UNECE）の枠組みで策定されました。1992年のリオ宣言第10原則（環境分野における情報アクセス、参加、司法アクセスの重要性を明記）を受けて具体化されたものです。

条約は1998年6月25日、デンマークのオーフスで開催されたUNECE第4回環境閣僚会議で採択されました。条約の通称である「オーフス条約」はこの採択地の名に由来します。

条約の主要な内容と目的

オーフス条約の核心は、以下の三つの権利を各国の国内法制度において保障し、市民の環境分野における役割強化と積極的な参加を促すことにあります。

1. 環境情報へのアクセス権: 公的機関が保有する環境に関するあらゆる情報について、市民が請求し取得できる権利を定めます。情報の非公開は厳格な理由に限られ、原則として情報公開が義務付けられます。
2. 意思決定における市民参加権: 環境に影響を及ぼす可能性のある計画や政策策定プロセスにおいて、市民が意見を表明し、その意見が意思決定に考慮される権利を保障します。これにより、環境政策の透明性と正当性を高めます。
3. 司法へのアクセス権: 環境法規の違反や権利侵害があった場合に、市民が裁判所など独立した公正な機関に訴えを提起し、救済を求める権利を定めます。これにより、市民は環境保護のための権利を実効的に行使できます。

本条約は、これらの権利保障のため、各締約国に国内法整備や必要な制度構築を義務付けています。これにより、環境保護における市民の役割が強化され、より良い環境ガバナンスの実現を目指しています。

発効と関連議定書

オーフス条約は、所定の批准数を満たし、2001年10月30日に正式に発効しました。

また、条約の規定に基づき、2003年5月には本条約第5条9項に従い、化学物質の排出・移動に関する情報公開制度であるPRTR（汚染物質排出移動登録）に関する議定書が採択されています。

加盟国の状況

主にUNECE加盟国を中心に多くの国が本条約を締結しています。以下は、インプット情報に基づき2006年11月時点の批准国・署名国の一部です。

批准国（一部）
アルバニア、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、EU、フィンランド、フランス、グルジア、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、カザフスタン、キルギスタン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、モルドバ共和国、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、タジキスタン、マケドニア共和国（現：北マケドニア共和国）、トルクメニスタン、ウクライナ、イギリス

署名国（一部）
クロアチア、ドイツ、アイスランド、アイルランド、リヒテンシュタイン、モナコ、スイス

これらの国々において、条約に基づいた国内制度の整備が進められています。

もう一度検索