オーボエ協奏曲 (モーツァルト)

モーツァルト オーボエ協奏曲 ハ長調 K. 314 (285d)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって作曲されたこの協奏曲は、オーボエと管弦楽のための作品であり、数あるオーボエ協奏曲の中でも特に有名です。オーボエ奏者にとっては、プロのオーケストラ入団試験で頻繁に演奏される重要なレパートリーとなっています。

この協奏曲の楽譜が発見されて以来、同じケッヘル番号を持つ『フルート協奏曲第2番 ニ長調』の原曲と見なされることが一般的です。しかし、この点については異論も存在します。モーツァルトは他にも『オーボエ協奏曲 ヘ長調』（K. 293 (416f) ）を作曲していますが、こちらは未完成の作品です。

作曲の経緯

この協奏曲は、1777年4月から9月23日の間にザルツブルクで作曲されたと推測されています。当時、ザルツブルクの宮廷オーケストラでオーボエ奏者を務めていたジュゼッペ・フェルレンディスからの依頼がきっかけでした。しかし、初演に関する詳しい記録は残っておらず、詳細は不明です。1778年2月14日付のモーツァルトの手紙には、マンハイムの宮廷オーボエ奏者フリードリヒ・ラムがこの曲を演奏し、好評を博したことが記されています。

楽譜は一時行方不明となり、忘れ去られていましたが、1920年にモーツァルト研究家のベルンハルト・パウムガルトナーが、モーツァルトの息子の遺品の中から草稿（パート譜）を発見し、その存在が再確認されました。このパート譜は18世紀にウィーンで写譜されたものと推測され、パウムガルトナーによってスコアが再構成され、1949年にロンドンで出版されました。なお、フェルレンディスのために書かれたのは別の曲だという説もあり、その曲は『フェルレンディス協奏曲』（K. 271k）と呼ばれ、ケッヘルの目録第6版では紛失作品として分類されています。

楽器編成

独奏オーボエ
管楽器：オーボエ2、ファゴット（任意）、ホルン2
弦楽器：第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、低弦（チェロ、コントラバス）

構成

全3楽章構成で、演奏時間はおよそ23分です。全体的に音域が高く、高度な技巧が要求されるため、演奏は非常に難しいとされています。各楽章の終わりにはカデンツァがありますが、モーツァルト自身が書いたカデンツァは現存していません。

第1楽章 アレグロ・アペルト
ハ長調、4分の4拍子、協奏風ソナタ形式。
短い展開部が特徴です。
第2楽章 アダージョ・ノン・トロッポ
ヘ長調、4分の3拍子、ソナタ形式。
展開部がなく、再現部では第2主題のみが再現される変則的なソナタ形式です。
第3楽章 ロンド：アレグレット
ハ長調、4分の2拍子、ロンド風ソナタ形式。
変則的なフィナーレですが、ロンドの要素が明確に感じられます。

フルート協奏曲第2番との関係

一般的に、このオーボエ協奏曲は、フルート愛好家の医師フェルディナント・ドゥジャンからフルート協奏曲の作曲依頼を受けた際に、『フルート協奏曲第2番』として編曲されたとされています。オーボエ協奏曲はハ長調、フルート協奏曲はニ長調ですが、独奏パートには若干の変更があるものの、内容はほぼ同一です。ただし、決定的な証拠がないため、異論も存在します。

参考文献

モーツァルト『オーボエ協奏曲、フルート協奏曲第1番、ファゴット協奏曲』（カール・ベーム指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団）のライナーノーツ
『モーツァルト名盤大全』（音楽之友社）

外部リンク

オーボエ協奏曲 ハ長調 K. 314 (285d)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
『新モーツァルト全集』におけるOboe Concerto in C KV 314 (285d)の楽譜及び校訂報告 （ドイツ語）
* K.314の解説 - Mozart con grazia

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