オールド・ブラウン・シュー

オールド・ブラウン・シュー：ビートルズ期のジョージ・ハリソンの隠れた名曲

1969年5月、ビートルズのシングル『ジョンとヨーコのバラード』のB面に収録され、世界中を席巻した一曲。それが、ジョージ・ハリスン作曲の「オールド・ブラウン・シュー」(Old Brown Shoe)です。オリジナルアルバムには収録されていませんが、『ザ・ビートルズ1967年～1970年』や『パスト・マスターズ Vol.2』といったコンピレーションアルバムに収録されているため、多くのファンに親しまれています。

スカのリズムと相反する概念の歌詞

この曲は、独特のリズムが特徴です。部分的にスカの要素を取り入れており、軽快でありながらも奥行きのあるサウンドを生み出しています。歌詞は、物事の二面性、相反する概念をテーマとしており、正反対の言葉を並べることで、人生の複雑さや多様性を表現しています。このスタイルは、ポール・マッカートニーの楽曲「ハロー・グッドバイ」に通じるものがあります。ハリスン自身も著書『I・ME・MINE』の中で、ピアノを弾きながら反対語を思いつくままに書き連ねて歌詞が生まれたと語っています。

制作過程：ゲット・バック・セッションから正式録音まで

「オールド・ブラウン・シュー」の制作は、1969年1月のゲット・バック・セッションから始まりました。3日間にわたるリハーサルを経て、リンゴ・スターによるオフビートなドラムのパートが加えられました。その後、2月にはデモ音源が録音され、「サムシング」「オール・シングス・マスト・パス」と共に『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録されています。正式なレコーディングは4月16日、EMIレコーディング・スタジオで行われ、リンゴ・スターが映画撮影のため不在だったため、ポール・マッカートニーがドラムを担当しました。レコーディングでは、エンジニアのジェフ・ジャラットによるボーカルへの歪み加工など、様々な工夫が凝らされています。完成したミックスの中から、最終的に1つのバージョンがマスターとして選ばれました。

レコーディング参加メンバー

当初のクレジットでは、ジョージ・ハリスン（ボーカル、ギター、オルガン、ベース）、ジョン・レノン（バッキングボーカル）、ポール・マッカートニー（バッキングボーカル、ピアノ）、リンゴ・スター（ドラム）とされていました。しかし、後に発売された『アビイ・ロード (スーパー・デラックス・エディション)』のブックレットでは、リンゴ・スターが映画撮影のため不参加であったことが明記され、代わりにポール・マッカートニーがドラムを担当したことが改めて示されています。

リリースとチャート成績

「オールド・ブラウン・シュー」は、『ジョンとヨーコのバラード』のB面として、1969年5月30日にイギリスで、6月4日にアメリカでリリースされました。アメリカではA面の「ジョンとヨーコのバラード」の一部歌詞がキリスト教を冒涜しているとして放送禁止となったため、チャート入りはしませんでした。しかし、オーストラリアのGo-Set National Top 40では両A面扱いとしてチャートに登場しました。オリジナルアルバムには収録されませんでしたが、後に様々なコンピレーションアルバムに収録され、現在でも多くのリスナーに楽しまれています。

ライブ演奏とカバー

ジョージ・ハリスンは、1991年の日本公演や、1992年のロイヤル・アルバート・ホールでの自然法党の慈善興行でこの曲を演奏しました。彼の死後、2002年の追悼コンサート『コンサート・フォー・ジョージ』では、ゲイリー・ブルッカーがカバー演奏を行い、エリック・クラプトンやビリー・プレストンも参加しました。他にも、レスリー・ウェストやコナン・オブライエンなど、多くのアーティストが「オールド・ブラウン・シュー」をカバーしています。

まとめ

「オールド・ブラウン・シュー」は、ジョージ・ハリスンのソングライターとしての才能が遺憾なく発揮された、隠れた名曲です。独特のリズム、相反する概念を織り交ぜた歌詞、そして複雑なレコーディング過程など、様々な要素が絡み合い、奥深い魅力を放っています。ビートルズの楽曲の中でも、その独特の雰囲気と、ハリスンの人となりを感じさせる一曲として、高く評価されています。

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