オールロマンス事件

オールロマンス事件の概要

オールロマンス事件（オールロマンスじけん）は、1951年に発生した一連の行政闘争および契機となった事件である。この事件は、部落解放全国委員会（部落解放同盟）と京都市との間で繰り広げられ、特に市長選の動きが重要な要素であった。

背景と発端

1950年、高山義三が革新陣営の支持を受けて京都市長に当選した。しかし、高山は当選後、保守勢力との妥協を重ねる行動をとり、その結果、市政の保守化が進展した。この状況に対し、当時の京都市役所には左翼グループが存在し、彼らは高山の行動に不満を持ち、それを反発する機会を探っていた。

小説「特殊部落」とその反発

1951年、京都市衛生課の職員であった杉山清次は、オール・ロマンス誌の10月号に小説「特殊部落」を発表する。この作品は、実在する被差別部落である柳原（崇仁地区）を舞台に、架空の恋愛物語を描いたものだ。しかし、この小説は部落住民を差別的かつ興味本位で描いているとの抗議を受け、地域住民からの反発が高まった。

行動の展開

市役所内の左翼グループは、この作品を問題視し、部落解放全国委員会に抗議行動を促す。この動きにより、解放委員会は小説を差別的と糾弾する要綱を執筆するまでに至る。一方で、京都市役所内部でも不満を受け、市長は「遺憾」の意を表明し、同和行政予算の拡充を約束する。結果として、1952年度には同和予算が前年の5.8倍に増加することとなる。

意義と影響

この事件は、解放委員会が市政に対して効果的にアプローチし、行政側がその正当性を認める形をとったことから、部落解放運動における一つのモデルケースとなった。特に、差別事件を基にした行政闘争の形態が定着し、他の地方自治体における同様の運動にも影響を与えた。解放新聞の元主筆は、この運動の重要性を称賛している。

作者のその後

小説発表後、杉山は批判を受け、公職を辞任し、中小企業を転々とする生活を余儀なくされる。彼の作品に対する評価は分かれ、後年に検証が行われた結果、多くの人々からは「差別小説ではない」との意見が寄せられた。また、彼の名誉回復を求める動きもあったが、彼の生涯の終わりを知ることはできなかった。

問題点と批判

市役所内の左翼グループは、部落解放運動を利用して優遇された結果、朝鮮人差別への対策が後回しにされることになった。このことについては賛否が分かれ、部落解放委員会の代表者からも自己批判の声が上がった。しかし、一方で小説自体には差別的な内容が含まれていないとの意見もあり、様々な視点からの議論が行われている。

その後の展開

1983年には、同和行政に関する問題が新たに発生し、再び「オールロマンス事件」というスローガンが用いられた。この際、以前の事件と同様に、部落解放同盟は市を糾弾する姿勢を見せたが、内部からの批判も依然として存在した。これは、過去の問題に対する取り組みが軽視された結果とも言える。今後の部落問題に関する動向が注目される。

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