カイオワ・タノ語族

カイオワ・タノ語族：ニューメキシコからオクラホマの言語遺産

カイオワ・タノ語族は、アメリカ南西部の先住民によって話される一連の言語からなる語族です。その分布域は、ニューメキシコ州、カンザス州、オクラホマ州、そしてテキサス州にまで広がります。この語族は、大きく分けて二つのグループに分類できます。一つは、ニューメキシコ州を中心に、一部アリゾナ州にも居住するプエブロ諸部族が話す言語群であり、ティワ語（タオス、ピクリス、南ティワ）、テワ語、そしてトワ語などが含まれます。もう一つは、オクラホマ州南西部を主な居住地とするカイオワ語です。歴史的には、カイオワ族はテキサス州とオクラホマ州にまたがる地域を縄張りとしていました。

言語の分類と名称

カイオワ・タノ語族には、4つの語派に分類される7つの言語が存在すると考えられています。ティワ語とテワ語は、密接な関係を持つ言語群を形成し、カイオワ語とトワ語も同様の関係にある可能性が指摘されています。

この語族の名称に関しては、長い間「タノ語族」という呼称が用いられてきました。これは、ティワ語、テワ語、トワ語といったプエブロの言語が主要な構成要素であったことに由来します。しかし、カイオワ語が同語族に属するという説が登場したことで、議論が巻き起こりました。遊牧生活を送っていたカイオワ族の文化は、定住生活を送るプエブロ諸部族とは大きく異なっており、当初は言語学的つながりも認めがたいように思われたためです。

しかし、近年の言語学的調査によって、カイオワ語を含まないタノ語族は側系統群（共通祖先を持つものの、そのすべての子孫ではないグループ）であり、プエブロ諸言語とカイオワ語は、より古い共通の祖語を持つことが示唆されています。特に、カイオワ語とトワ語の関係は、トワ語とティワ・テワ語群との関係よりも近い可能性があります。専門的には、「タノ語族 (Tanoan)」と「カイオワ・タノ語族 (Kiowa–Tanoan)」は同義語として扱われますが、文化的な背景から、「Kiowa–Tanoan」という名称がより一般的に使用されています。これは、「Tanoan」という名称が、一つの文化圏を共有する複数の民族を指す言葉として使われているためです。

カイオワ族の先史は未だ謎に包まれており、なぜこの語族が、大きく異なる生活様式を持つ「プエブロ」と「プレーンズ」の二つのグループに分かれたのか、その歴史的経緯は明らかではありません。口承伝承などからも、民族間の古代のつながりを示す証拠は乏しいとされています。学者たちは現在も、共通の言語学的特徴が発展するまでに、これらの民族がいつ、どのように接触したのかについて調査を続けています。現存するカイオワ族の伝統や歴史記録によれば、彼らは北と西へと移動し、現在の部族居住地へと到達したとされます。この地域は現在のテキサス州とオクラホマ州に相当し、カイオワ族がその地域を支配するようになったのは18世紀後半からと考えられています。

系統関係と音韻史

カイオワ・タノ語族は、ユト・アステカ語族との関連性が示唆されており、アステカ・タノ語族仮説として知られています。この仮説はまだ証明されていませんが、有望な仮説として多くの言語学者に受け入れられています。

言語の比較研究においては、音韻史の解明が重要です。Kenneth Hale (1967) は、語幹の語頭における子音の対応関係に基づいて、タノ祖語の子音体系を再構しようと試みました。この研究では、母音の長さや声調、強勢などの韻律的特徴は考慮されていませんでした。様々な言語における音韻変化を考慮すると、多くの音韻融合が各言語で起こっていることがわかります。これらの音韻対応関係、そして対応する語彙を比較することで、祖語の再構が進められています。

まとめ

カイオワ・タノ語族は、アメリカ南西部の言語的多様性を理解する上で重要な語族です。その歴史、文化、そして言語構造を解明していくことは、アメリカ先住民の歴史と文化をより深く理解することにつながります。今後の研究によって、この語族の起源や、各言語間のより詳細な関係が明らかになることが期待されます。

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