側系統群

側系統群とは何か？

生物の分類において、側系統群とは、単一の祖先から進化した生物群のうち、その一部の系統を除いたものを指します。言い換えれば、系統樹の一部を切り取ったような分類群です。

対照的に、単一の祖先から進化したすべての生物を含む分類群を単系統群、異なる祖先から進化した生物をまとめてしまった分類群を多系統群と呼びます。

分岐分類学と進化分類学における側系統群

側系統群の扱いは、分類学の立場によって異なります。分岐分類学では、系統関係を重視するため、側系統群は自然分類とはみなされず、好まれません。なぜなら、側系統群は恣意的な要素を含み、系統樹の全体像を正確に反映していないためです。

一方、進化分類学では、系統関係だけでなく、生物の形質（形態や機能）の類似性も重視します。そのため、顕著な形質を持つ系統を独立した分類群として扱う一方、残りの生物をまとめて側系統群として扱うことがあります。

側系統群の具体例

身近な例として、爬虫類と鳥類の関係が挙げられます。鳥類は爬虫類から進化したと考えられており、系統樹上では爬虫類の一部を占めます。しかし、鳥類は翼や羽毛といった特徴的な形質を持つため、一般的には爬虫類とは別個に分類されています。これは、側系統群の一例であり、分岐分類学の立場からは、鳥類を含めた分類が正しいとされます。

また、従来は独立した分類群とされていたシロアリは、近年の研究によりゴキブリの仲間であることが判明し、ゴキブリ目の中に分類されるようになりました。これは、分子生物学的な解析が進んだことで、系統関係がより明確になった好例です。

他にも、かつて独立した分類群とされていた有髭動物（ハオリムシなど）は多毛類（ゴカイの仲間）の一部に分類変更されました。ウシやイノシシなど偶蹄類とクジラ類は、かつては別々の分類群でしたが、現在では鯨偶蹄目としてまとめられています。

これらの分類の見直しは、側系統群の問題点を示唆しています。側系統群は、分類の基準として形質の類似性や他の生物との関連性など、様々な要因を考慮する必要性を示しています。

その他の側系統群の例

以下の分類群も、側系統群と考えられています。

サル（ヒトを除いた霊長目）: ヒトを含む霊長類からヒトを除いたもの
ガ（アゲハチョウ上科、セセリチョウ上科を除いた鱗翅目）:鱗翅目（チョウやガの仲間）から一部のグループを除いたもの
ハチ（アリ科を除いた膜翅目）: 膜翅目（ハチやアリの仲間）からアリを除いたもの
魚類（四肢動物を除く全ての脊椎動物）: 脊椎動物から四肢動物（両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類）を除いたもの
* 双子葉植物（単子葉植物がこの中から分化したと考えられる）: 双子葉植物から単子葉植物を除いたもの

まとめ

側系統群は、生物分類において複雑な問題を引き起こします。分岐分類学と進化分類学の両方の視点から検討し、分類の基準を明確化していくことが重要です。形態や遺伝情報など様々なデータを統合し、より正確な系統樹を描いていくことで、生物進化の理解が深まります。 今後、更なる研究により分類体系の見直しが進む可能性も高く、常に最新の知見を踏まえた理解が必要です。

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