カイセライ

カイセリの路面電車「カイセライ」：都市交通の進化と未来

トルコ共和国中部に位置する都市カイセリ。かつては路線バスや自家用車が主な交通手段でしたが、都市の発展に伴い、慢性的な交通渋滞が深刻な問題となっていました。この状況を改善するため、2000年から新たな公共交通機関の導入が検討され始めました。

綿密な調査と検討の結果、東西を結ぶ路面電車（ライトレール）システムの構築が最適解として選ばれました。これは、都市の構造や将来的な発展予測、そして既存の交通網とのスムーズな連携などを総合的に考慮した結果です。2005年には建設工事が発注され、2006年1月に着工。トルコの建設会社であるヤプ・メルケジが、環境への配慮も重視した設計・施工を行い、2009年8月1日、全長17.5kmの路線が開通しました。

カイセライの路線設計は、緑化軌道や沿線の植樹など、環境への配慮が徹底されており、海外からも高い評価を得ています。また、既存のバス路線網との連携もスムーズに計画され、市民の利便性向上に大きく貢献しました。その結果、開通から2年後の2011年には、年間利用者数が2200万人を突破するなど、高い人気を博しました。さらに、沿線には住宅地や商業施設、スポーツスタジアムなどの開発が進み、カイセライはカイセリ市の発展を支える重要なインフラとして、都市の景観や生活様式に大きな変化をもたらしました。

2014年にはエルジェス大学方面への支線を含む路線延伸工事が完了し、2020年現在では総延長34.4kmに拡大しています。現在運行されている路線は、東西を結ぶT1号線と、T1号線の一部区間を経由し南部地域へ向かうT2号線の2路線です。

カイセライで使用されている車両は、すべて5両編成の超低床電車です。開業当初から運行されているイタリア・アンサルドブレーダ（現日立レール）製の車両38両に加え、2016年からはトルコ国産のボザンカヤ製車両30両も導入されています。ボザンカヤ製車両は、部品のすべてがトルコ国内で生産されており、コスト削減とカイセリ市特有のニーズへの対応という点で大きなメリットがあります。両車両とも、車内全体が低床構造となっており、高齢者や障がいを持つ方にとっても利用しやすい設計となっています。

カイセリ交通公社は、カイセライの利用促進のため、自転車シェアリングサービスも導入しています。これらの取り組みは高く評価され、数々の賞を受賞しています。

将来展望としては、トルコ共和国運輸海事通信省が主導する7kmの路線延伸計画や、エルキレト国際空港へのアクセス路線の建設も検討されています。これらの計画が実現すれば、カイセライはさらに利便性を高め、カイセリ市の発展に貢献するでしょう。カイセライは、単なる交通手段としてだけでなく、都市の活性化や持続可能な発展を促進する重要な役割を担っていると言えるでしょう。

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