カガシラ

カガシラ（Diplacrum caricinum）

カガシラは、カヤツリグサ科に属する一年生の小型草本です。湿地を好んで生育し、かつては日本各地に分布していましたが、近年ではその姿を見ることが非常に難しくなっています。別名としてヒメシンジュガヤとも呼ばれています。

特徴

カガシラは、高さ4～15cmほどの小さな植物で、根は細く赤紫色をしています。根茎はなく、茎は基部で多少分枝することがありますが、株立ちになることもあります。茎の断面は角がはっきりとした3稜形をしており、多数の節があります。葉は全て茎から出て、根出葉はありません。葉は線形で長さ1～5cm、幅1～2mmで、先端は尖っています。葉の基部は鞘状になり、赤褐色をしています。

花期は7～10月で、葉の付け根から短い柄のある分花序が出て、その先に多数の小穂が頭状に集まって咲きます。小穂は長さ2～3mmで、雌雄の区別があり、中央に雌小穂、その基部を囲むように雄小穂が着いています。雄花鱗片は狭卵形で先端が鈍く尖り、雌小穂の鱗片は長楕円形で先端が次第に狭くなるか、3つに裂けます。痩果は球形で長さ0.6～1mm、硬い表面には格子模様があり、上部には微毛が生えています。痩果は2枚の鱗片に包まれたまま落下します。

分布と生育環境

カガシラは、日本では本州の千[[葉県]]以西から琉球列島にかけて分布しており、国外では中国南部、台湾、東南アジア、インド、スリランカ、オーストラリアなどにも生育しています。湿地に生える植物です。

分類

カガシラ属は熱帯を中心に6～8種が知られており、日本にはカガシラのみが分布しています。この属は、シンジュガヤ属に近縁で、かつてはシンジュガヤ属に含まれていました。両属は、小花が単性であること、痩果が球形で硬く、基部に基盤があることなど共通点が多いです。しかし、カガシラ属は花序が頭状で腋生であるのに対し、シンジュガヤ属は円錐花序または穂状花序で頂生または腋生である点、カガシラ属の痩果が鱗片に包まれて落下するのに対し、シンジュガヤ属では痩果が単独で落下する点などが異なります。

シンジュガヤ属のケシンジュガヤやマネキシンジュガヤは、小型の一年草で根茎がなく、地表に伏せるように伸びるなど、カガシラに似た特徴を持ちますが、これらの植物は茎の基部に近いほど葉が長くなる点や、花序に明瞭な柄がある点などで区別できます。

保護の現状

カガシラは、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類に指定されており、多くの府県で何らかの保護指定を受けています。特に、千[[葉県]]、茨城県、群馬県、岐阜県、愛知県、三重県、和歌山県、山口県、愛媛県、長崎県、熊本県、宮崎県、沖縄県では絶滅危惧I類に指定され、深刻な状況にあります。また、大阪府と福岡県では絶滅したとされています。小型植物であるため、環境の変化に非常に弱く、背の高い植物の繁茂などによって容易に姿を消してしまうことが危惧されています。一方で、適切に管理された湿地ではよく生育することが知られており、環境が整えば個体数の増加も期待できます。

参考文献

牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
大橋広好他編、『改定新版 日本の野生植物 1 ソテツ科～カヤツリグサ科』、(2015)、平凡社
星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』、(2011)、平凡社
谷城勝弘『カヤツリグサ科入門図鑑』(2007) 全国農村教育協会
北村四郎他、『原色日本植物図鑑・草本編III』改訂53刷、(1998)、保育社
星野卓二他、『岡山県産カヤツリグサ科植物図譜(II) 岡山県産カヤツリグサ科植物図譜 カヤツリグサ属からシンジュガヤ属まで』、(2003)、山陽新聞社

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