カサスゲ

カサスゲ（Carex dispalata）

カサスゲは、単子葉植物カヤツリグサ科スゲ属に分類される植物です。北海道から九州の平地にかけて分布し、湿地や池の浅瀬などに自生します。草丈は1mほどに成長し、太い地下茎を横に伸ばして大きな群落を形成することが特徴です。その名の通り、かつては菅笠などの材料として広く利用されてきました。

特徴

カサスゲの葉は細長く、やや立ち上がるように生えます。根元の鞘は分解されて糸状の網目状になります。晩春から初夏にかけて花茎を伸ばし、花を咲かせます。

花茎の先端には灰褐色の細長い棒状の雄小穂が1つ付きます。まれに、その基部に2つ目の雄小穂が見られることもあります。雄小穂の下には数個の雌小穂がつきます。雌小穂は細長く、ほとんど柄がなく、直立するか、先端がやや垂れ下がります。

果胞は緑色で、先端が尖った嘴状になり、その先端は外側に反り返ります。鱗片は果胞よりもずっと小さく、濃い褐色をしているため、果胞の根元に小さな斑点があるように見えます。果胞は枯れると褐色に変化します。

分布と生育環境

カサスゲは、北海道から九州にかけての平地に分布しています。湿地や池の浅瀬などを好み、水中の泥に根を張り、太い地下茎を横に伸ばして群生します。

利用

かつては、水田や水路、ため池の周辺など、ごく身近な場所で普通に見られ、菅笠や蓑などの民具の材料として利用されていました。特に、菅笠はカサスゲで作られることが多く、その名前の由来にもなっています。また、地域によっては、注連縄の材料としても用いられていました。これらの用途のために、カサスゲを専門に栽培する水田が確保されていた地域もありました。

しかし、近年では、民具の需要が減少し、水路や水田の改修によって生息環境も減少したため、カサスゲの自生数は減少傾向にあります。

一方で、自然に近い形での河川改修が提唱されるようになり、カサスゲをそのような用途に活用するための研究や試みも行われています。

近縁種

カサスゲには、以下のような近縁種が存在します。

アキカサスゲ (C. nemostachys)：カサスゲに似ていますが、秋に花を咲かせます。近畿地方以西の渓流沿いなどの山際に生育します。
キンキカサスゲ (C. takeuchii)：カサスゲに似ていますが、柱頭が落ちずにいつまでも残るのが特徴です。

その他、オオカサスゲ (C. rhymenodon) やアカンカサスゲ (C. drymophila) などもカサスゲの名を持っています。これらの種も湿地に生息する大型のスゲですが、いずれも雄小穂が複数ある点でカサスゲとは大きく異なり、別の節に分類されています。

まとめ

カサスゲは、かつては生活に密着した植物でしたが、現在ではその姿を見かける機会が減少しつつあります。しかし、その保全に向けた取り組みも進められており、再び身近な存在としてカサスゲが息づく日が来ることを願います。

参考文献

勝山輝男(2005)「日本のスゲ」（ネイチャーガイド・文一総合出版）
勝山輝男 (2015)『日本のスゲ 増補改訂版』（文一総合出版）
* 斎藤慧(2001)「スゲ類の世界 -福島県に自生するスゲ類-」（歴春ふくしま文庫・歴史春秋社）

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