カザフの新疆脱出

カザフの新疆脱出

カザフの新疆脱出は、1950年代から1960年代にかけて、中華人民共和国の新疆ウイグル自治区に居住していたカザフ民族が二度にわたって国外へ脱出した事件を指します。この脱出は、彼らが伝統的な生活様式や信仰を守るための、非常に困難な旅路でした。

背景

新疆ウイグル自治区（東トルキスタン）は、古くから多様な民族が生活する地域です。その中でもカザフ民族は、1930年代から盛世才の圧政や馬歩芳による虐殺など、様々な要因によって移動を繰り返してきました。国共内戦を経て、1949年に中華人民共和国が成立すると、新疆は中国共産党の支配下に入りました。中国政府は、カザフ民族の伝統的な部族主義やイスラム教を尊重する姿勢を示しませんでした。

1回目の脱出 (1950年)

1950年、中国政府の統治を嫌ったカザフ部族は、バルクルに集まり、自分たちの生活様式を維持するために、カシミールのステップ地帯への脱出を決議しました。これが1回目のカザフ脱出です。カシミールを目指すカザフ部族は、中国共産党軍の支配地域を通過する際に攻撃を受け、クムル地区のバルクルと青海省ティムルリク近辺でそれぞれ激しい戦闘に巻き込まれました。生き残った人々はチベットへ逃げ込み、過酷な環境の中、病気や飢餓に苦しみながらカシミールを目指しました。3ヶ月の旅路の末、シュリーナガルにたどり着いたカザフ族は、出発時の400家族から350家族ほどに減少していました。

2回目の脱出 (1962年)

1962年、2回目の脱出が発生します。今回は、カザフ民族だけでなく、他の少数民族もソビエト連邦へ脱出しました。これは、新疆で発生した集団暴動や、共産党政府が少数民族に押し付けた生活様式の改革が原因でした。

脱出の困難さ

カザフ民族の脱出は、中国共産党軍の攻撃、過酷な自然環境、飢えや病気など、多くの困難を伴いました。しかし、彼らは自分たちの伝統と信仰を守るため、危険を顧みず新たな地へと向かいました。

参考文献

松原正毅『カザフ遊牧民の移動　アルタイ山脈からトルコへ 1934-1953』平凡社、2011年

関連項目

チベット動乱
新疆侵攻
東トルキスタン独立運動

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