カシオペヤ座A

カシオペヤ座A（Cas A）は、カシオペヤ座に位置する超新星残骸であり、太陽系外の電波源としては全天で最も強い電波強度を誇ります。1GHz帯では2,720Jyに達するその強さは、宇宙における強力な電波源としての地位を不動のものにしています。

この天体を形成した超新星爆発は、地球から約11,000光年（約3.4キロパーセク）離れた銀河系内で発生しました。爆発によって放出された物質の雲は、現在も膨張を続け、その直径は約10光年に達しています。条件の良い夜空では、かすかに肉眼でも捉えることができるほどです。

驚くべきことに、この超新星爆発は、発生から約300年が経過しているにも関わらず、歴史的な記録には一切残っていません。この理由は、爆発時に放出された可視光が、地球に到達する前に星間塵によって吸収されてしまったためと考えられています。また、この超新星を起こした恒星は非常に質量が大きく、爆発前に外層の大部分を周囲に放出した可能性があります。この外層物質が、爆発時に放出された光を再吸収したため、地球からは観測できなかったと考えられています。

カシオペヤ座Aは、ケンブリッジ電波源カタログ第3版では「3C 461」、グリーン超新星残骸カタログでは「G 111.7-2.1」として登録されています。超新星残骸の膨張殻は約3,000万Kという高温で、4,000km/sという驚異的な速度で膨張を続けています。

1947年に初めて単独の電波源として発見されて以来、カシオペヤ座Aは様々な観測対象となってきました。その可視光対応天体は1950年に特定されています。1979年には、ヨシフ・シクロフスキーがカシオペヤ座Aにブラックホールが存在する可能性を示唆しました。1999年には、チャンドラX線天文台によって、この超新星残骸の中心付近に高温の点状光源が発見され、中性子星やブラックホールの存在を示唆しています。

現在の観測データから逆算すると、この天体を形成した超新星爆発は1667年前後に発生したと推定されています。一部の研究者は、1680年8月16日にジョン・フラムスティードがカシオペヤ座の近くに記録した「カシオペヤ座3番星」が、実はこの超新星残骸を観測したものではないかと指摘しています。もしそうであれば、彼は偶然超新星残骸を観測し、それを誤って恒星として記録した可能性があります。いずれにしても、カシオペヤ座A以降、銀河系内で肉眼で見える超新星は観測されていません。

カシオペヤ座Aの画像は、様々な波長で観測されており、その構造や膨張の様子が詳細に研究されています。X線画像では、高温のガスが放出されており、可視光画像では、爆発によって形成された複雑な構造が見られます。これらの画像は、カシオペヤ座Aがどのように形成され、進化してきたかを理解する上で重要な手がかりとなっています。

カシオペヤ座Aは、その特異な性質から、天文学者にとって非常に重要な研究対象であり、超新星爆発や超新星残骸の理解を深める上で貴重な情報を提供しています。これからも、様々な観測によって、カシオペヤ座Aの更なる謎が解明されることが期待されます。

もう一度検索