カシオン山

カシオン山：ダマスカスを見守る聖なる山

カシオン山は、シリアの首都ダマスカスの北西に位置し、街全体を見下ろすようにそびえ立つ標高1,151メートルの山です。アラビア語では「Jabal Qāsiyūn」と表記され、英語では「Mount Qasioun」と呼ばれています。山の斜面にはレストランが点在し、ダマスカスの美しい夜景を一望できるスポットとして人気を集めています。

宗教的な意義

カシオン山は、その歴史と伝説から、様々な宗教において重要な場所とされています。

血の洞窟 (Maghārat al-Dam): 伝説によれば、最初の人間であるアダムが一時的に住んでいた場所、アブラハムにまつわる物語、イエスが祈りを捧げた場所とされています。また、カインがアベルを殺害した場所であるとも伝えられており、世界初の殺人現場として「血の洞窟」と呼ばれています。何百年もの間、祈りが届きやすい場所、特に干ばつの際にダマスカスの統治者が雨乞いをする場所として知られてきました。

40聖人のミフラーブ: スンナ派のイスラム教徒にとって、カシオン山は「Abdāl」として知られる40人の聖人が夜通し祈りを捧げた場所であり、小さなモスクが「血の洞窟」の上に建てられています。

飢えの洞窟 (Maghārat al-Jūˁ): 「血の洞窟」から山を下った場所には、「飢えの洞窟」と呼ばれる別の洞窟があります。一説には、40人の聖人がこの洞窟で断食をして亡くなったとされています。また、1200年代には、40人の預言者が餓死した場所として記録されています。現在、洞窟は住宅に囲まれて隠れており、「al-Juyūˁīyah」（空腹の場所）と呼ばれています。

7人の眠れる若者の洞窟 (Aṣḥāb al-Kahf): 山の別の側には、原始キリスト教の史料やコーランにも記述されている「7人の眠れる若者」の洞窟であるという伝説があります。しかし、同様の主張をする洞窟は世界各地に存在するため、真偽は定かではありません。最近、洞窟の上にマドラサ（イスラム教の神学校）が建設されましたが、巡礼者は引き続き入場できます。

このように、カシオン山は様々な宗教的な伝説や史跡が残る場所であり、多くの巡礼者や観光客が訪れる場所となっています。ダマスカスの歴史と文化を深く理解するためには、カシオン山を訪れることは欠かせない経験と言えるでしょう。

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