カシノナガキクイムシ

カシノナガキクイムシ（Platypus quercivorus）

カシノナガキクイムシは、コウチュウ目に属するナガキクイムシ科の昆虫で、主に広葉樹に深刻な被害を引き起こす害虫です。この昆虫の成虫は、約5mmの長さで円筒形をしており、特に大径木の内部に穴を開けて生息します。こうした穿孔は樹木に急速な衰退をもたらし、特に夏季には葉が鮮やかな赤色に枯れることがあり、景観にも影響を与えます。

生態と被害の特徴

カシノナガキクイムシが特に活動を強めるのは夏場で、その際には樹木の周囲に木くず（フラス）が散乱するのが目立ちます。被害を受ける樹種としては、ミズナラやカシ、シイなどがあり、これらの樹木はしばしば大量に枯れたり、衰退したりします。カシノナガキクイムシは、奥山の旧薪炭林や、里山の老齢木に特に好んで生息します。

興味深いことに、この昆虫は他の病原体を運ぶ能力があり、マツ材線虫病（松くい虫）による被害と共通する点がありますが、両者には直接的な関連性はありません。この虫は「養菌性キクイムシ」と呼ばれるグループに属し、幹に掘ったトンネル内部で特定の菌類、特にRaffaelea quercivora（果樹病の原因となるナラ菌）を繁殖させて生活します。

被害の拡大

先例として、京都市の如意ヶ嶽など東山連峰においては、2005年から2010年の間にカシノナガキクイムシによるナラ枯れの被害が拡大し、多くの木々が影響を受けました。このように、カシノナガキクイムシは広範囲にわたって影響を及ぼすことがあります。

対策と防除方法

カシノナガキクイムシに対する主な対策としては、被害を受けた木を切り倒して燻蒸する伐倒処理が挙げられますが、被害数が多い場合には現実的ではないことが多いです。別のアプローチとして、樹木の幹に殺菌剤を注入する方法もありますが、予防効果は限定的です。また、幹をビニールシートで覆ったり、コーティング剤や殺虫剤を塗布することで、攻撃を避けることも可能です。

韓国においては、粘着シートを用いた対策が実施されていますが、被害が極端に拡大しても全ての樹木が影響を受けるわけではなく、被害木の周囲では自然の更新も見られます。そのため、何もしない選択肢も存在します。ただし、貴重な樹木が存在する場所では、専用に設計されたトラップを用いて大量捕獲を行い、他の防除方法と組み合わせた総合的なお手入れが行われることがあります。

例えば、春日山原始林では、薬剤の樹幹注入と市民団体によるトラップ設置が行われており、貴重な資産が保護されています。これにより、カシノナガキクイムシからの被害を最小限に抑える努力がされています。

このような対策を講じることで、カシノナガキクイムシからの被害を軽減し、健全な森林環境を維持することが期待されています。

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