シイ

シイ（椎）とは

シイは、ブナ科クリ亜科シイ属に分類される樹木の総称です。主にアジアに約100種類が分布しており、日本では2種が自生しています。また、近縁種であるマテバシイもシイと呼ばれることがあります。

シイの実はドングリの一種で、食用に適しているため「椎の実」として親しまれています。

名称について

漢字の「椎」は、スイという読み方が訛って使われるようになったとされています。中国では別の漢字が用いられることもありますが、日本では「椎」と書いて「シイ」と読むのが一般的です。

語源には諸説あり、葉が飯を「敷く」ことに由来するという説もありますが、葉の大きさから懐疑的な見方もされています。

マテバシイも「シイ」と呼ばれることがありますが、マテバガシ、トウジイなどの別名もあります。

特徴

シイは常緑の高木で、雌雄同株です。葉は2列に並び、基部が歪んでおり、多くの種で鋸歯が見られます。

花は雌雄別で、雄花は尾状花序、雌花は穂状花序です。シイは雄花と雌花がつく枝が分かれており、上部の枝に雄花、下部の枝に雌花がつきます。

果実は翌年に熟し、数個が並んで実ります。殻斗に包まれており、カシ類と同様に風媒花ですが、シイの雄花は黄色く色づき、虫媒花としての特徴も持っています。

多くの種では、果実がクリのようにイガのある殻斗に包まれます。このことから、シイ属は「栗に似た樫」という意味でクリガシ属と呼ばれることもあります。

日本のシイ

日本には、以下の2種のシイが分布しています。

ツブラジイ（コジイ）: 関東以西に分布し、果実は球形に近い。
スダジイ（ナガジイ、イタジイ）: シイ属の中で最も北に進出しており、大きな木では樹皮に縦の割れ目が生じます。果実は細長い。

両種は共通点が多く、交雑もするため、区別が難しい場合があります。暖帯の平地に多く、照葉樹林の代表的な構成種です。都市部でも神社などで見られます。

葉はカシ類に比べて小さく、つやのある深緑色で、先端が尖っています。葉の裏は金色がかって見えるのが特徴です。花期は5〜6月で、果期は翌年の10月です。

果実はドングリですが、やや小型で色が黒く、お尻の白い部分との境がはっきりしません。殻を割ると種子は白く、生で食べるとやや甘みがあります。

両種の果実は、冬芽が扁平で、殻斗の表面にはイボ状の突起があるなど、海外のシイ属の種とは異なる特徴を持っています。

人との関わり

シイの実は、縄文時代から重要な食料でした。現在でもお祭りなどで煎った実が売られています。生でも食べられますが、煎って食べることが多いです。

材木は建材やシイタケ栽培のホダ木として利用され、樹皮は染料になります。

シイは里山の樹木として親しまれており、伐採にも強いため、人の手が入ると純林に近い状態になりやすいです。ただし、放置するとタブノキなどの樹木が侵入し、より複雑な森林になる可能性があります。

万葉集には、有間皇子が詠んだ歌にシイの葉が登場しますが、葉が小さすぎるため、実際にはスダジイかマテバシイだったのではないかという説もあります。

市（区町村）の木に指定している自治体

東京都中野区
東京都目黒区
神奈川県横浜市
神奈川県伊勢原市
茨城県石岡市
和歌山県有田市
埼玉県三郷市

参考文献

田中潔『知っておきたい100の木：日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社、2011年
辻井達一『日本の樹木』中央公論社、1995年
いわさゆうこ、八田洋章「どんぐりハンドブック」（文一総合出版）
徳永桂子「日本どんぐり大図鑑」（偕成社）

関連項目

ブナ科
ドングリ
マテバシイ属
カシ
鎮守の森

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