カシミールプリンセス号爆破事件

カシミールプリンセス号爆破事件：周恩来暗殺未遂事件の真相

1955年4月11日、インド航空のカシミールプリンセス号が南シナ海上空で爆発し、乗員乗客16名が犠牲となる痛ましい事件が発生しました。この事件は、中華人民共和国の周恩来首相の暗殺を目的とした航空テロであり、背後には複雑な国際関係と陰謀が絡み合っています。

事件の背景

1955年4月にインドネシアで開催されるバンドン会議に、中華人民共和国政府代表団が派遣されることになりました。当時、中国民航はインドネシアまで飛行できる民間航空機を保有していなかったため、インド航空のロッキード コンステレーションをチャーターしました。この機体がカシミールプリンセス号（機体記号:VT-DEP）です。

事件当時、中華人民共和国と中華民国は激しく対立しており、台湾を拠点とする中国国民党の情報機関が、周恩来首相の暗殺を企てたとされています。国民党は、香港の空港に勤務する中国人清掃員を買収し、カシミールプリンセス号に爆弾を仕掛けさせました。

周恩来暗殺計画

当初、周恩来首相自身がカシミールプリンセス号に搭乗する予定でしたが、虫垂炎の手術のため出発を延期し、難を逃れました。周恩来は、暗殺計画を事前に察知し、自身の日程を変更したという説もあります。実際、周恩来はインドネシアに向かう前に、ビルマ（現在のミャンマー）とインドの首相と会談するため、ラングーンを訪問しています。

爆破事件の発生

カシミールプリンセス号には、バンドン会議を取材する新華社通信の記者や、ポーランド、オーストリアの通信社記者、政府派遣団など、乗客11名と乗員8名が搭乗していました。1955年4月11日、香港を出発したカシミールプリンセス号は、離陸から4時間後、南シナ海上空18,000フィートを巡航中に爆発し、右翼が炎上しました。機長は直ちに遭難信号を発信し、不時着水を試みましたが、機体は着水の衝撃で大きく3つに分解し、水没しました。航空機関士、航法士、副操縦士の3名が救助されましたが、残りの乗員乗客16名は犠牲となりました。

事件の真相と国際的な影響

事件後、中華人民共和国政府は、アメリカ合衆国と蔣介石率いる中国国民党による殺人行為であると主張しました。インドネシアの事故調査委員会も、アメリカ製のMK-7爆弾が使用されたと発表しました。香港警察は、国民党に買収された中国人による犯行と断定しましたが、事件の真相は依然として謎に包まれています。

また、事件にはアメリカ中央情報局（CIA）が関与していたという噂も存在します。1966年には、アメリカ連邦上院で「1955年に東アジアのリーダー暗殺の策謀」が証言されたほか、ソ連に亡命したCIAエージェントの回顧録でもそれとなく触れられています。

カシミールプリンセス号爆破事件は、冷戦時代における国際的な陰謀と暗殺計画の象徴として、今もなお多くの謎を残しています。事件の真相解明と犠牲者の冥福を祈るとともに、歴史の教訓として後世に語り継いでいく必要があります。

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