カジス・グリニウス

カジス・グリニウス：リトアニアの苦難と独立の象徴

カジス・グリニウス（Kazys Grinius、1866年12月17日 - 1950年6月4日）は、リトアニアの第3代大統領であり、激動の時代を生きた政治家です。1926年6月7日から同年12月17日までという短い期間でしたが、その生涯はリトアニアの独立と苦難の歴史を色濃く反映しています。

生い立ちと政治活動

グリニウスは、リトアニアがロシア帝国の一部であった1866年に、マリヤンポレ近郊のセレマで生まれました。モスクワ大学で医学を学び、内科医としての道を歩み始めましたが、若い頃からリトアニアの政治活動に深く関与し、ツァーリ政府からの迫害を受けました。

家庭と悲劇

1896年、ヨアナ・パヴァルキーテと結婚し、ヴィルバリスで生活を始めました。1899年には息子のカジース、1902年には娘のグラジナが誕生し、家庭を築きました。第一次世界大戦中にはキスロヴォツクに住んでいましたが、1918年、赤軍の攻撃によって妻と娘を失うという悲劇に見舞われました。二人はキスロヴォツク墓地に埋葬されています。

独立後の政治

1918年にリトアニアが独立を回復すると、グリニウスは農民人民連合の一員として国民議会の議員となりました。1920年6月19日には、リトアニア・キリスト教民主党を中心とするキリスト教民主会派と、農民人民連合を中心とする会派による連立政権が発足し、グリニウスは首相に就任しました。1922年まで首相を務め、ソビエト連邦との間の条約に署名しました。

1926年5月8日から9日にかけて行われた第3セイマス議員選挙で与党・キリスト教民主会派が敗北すると、農民人民連合やリトアニア社会民主党などによる連立政権が発足し、グリニュスは大統領に選出されました。

クーデターと亡命

しかし、同年12月16日、軍部および民族主義者によるクーデターが起こります。軍部は共産主義者によるクーデターが差し迫っていると主張しましたが、グリニウスはこれを信じませんでした。民族主義者らは初代大統領のアンターナス・スメトナを担ぎ、スメトナは憲法の遵守を誓約したため、グリニウスはスメトナに権力を譲渡し辞任しました。

1941年にナチス・ドイツがリトアニアに侵攻すると、グリニウスはリトアニアが他国に占領されることを拒否し、ドイツとの協力を拒みました。1944年にソビエト軍がリトアニアを再占領すると、彼は西側に逃れ、1947年にアメリカ合衆国に移住しました。

晩年と帰還

1950年、グリニウスはイリノイ州シカゴで亡くなりました。1990年にリトアニアが独立を回復すると、彼の遺体はリトアニアに戻り、再埋葬されました。

カジス・グリニウスの生涯は、リトアニアの激動の歴史を象徴しています。彼は、政治家として、医師として、そして家族を愛する人として、その生涯をリトアニアのために捧げました。


参考文献
エイディンタス, アルフォンサス、アルフレダス・ブンブラウスカス、アンタナス・クラカウスカス、ミンダウガス・タモシャイティス 著、梶さやか、重松尚 訳『リトアニアの歴史』明石書店、2018年。ISBN 9784750346434。
カセカンプ, アンドレス 著、小森宏美、重松尚 訳『バルト三国の歴史——エストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』明石書店、2014年。ISBN 9784750339870。

外部リンク
* Information about Kazys Grinius

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