カスバド

カスバド（古アイルランド語: Cathbad）は、アイルランド神話のアルスター物語群において、アルスター王コンホヴァル・マク・ネサに仕えたとされるドルイドの長です。

コンホヴァル王の誕生譚におけるカスバド

カスバドは、コンホヴァル王の誕生譚に深く関わっています。二つの異なる説が存在し、そのうちの一つでは、カスバドがコンホヴァル王の父親であるとされています。

ある説では、アルスター王エオハズの娘ネスが、未来を予知する能力を持つドルイドであるカスバドに、縁起の良い時を尋ねます。カスバドは「女王に王をもたらすための時」と答え、周囲に他の男性がいなかったため、ネスはカスバドを誘い、息子をもうけたと伝えられています。

別の説では、フィアンナ（戦士団）の長でありドルイド僧でもあったカスバドが、ネスの養父の家を襲撃し、多数を殺害します。ネスは復讐のため27人のフィアンナを雇いカスバドを追いますが、ある時、ネスが水浴びをしているところにカスバドが現れ、妻になるよう迫ります。武器を持たないネスは従うしかありませんでした。この説では、ネスの息子は恋人であるアイルランド上王ファフトナとの間に生まれたとされ、カスバドの子ではありません。カスバドは、出産を控えたネスに対し、もし翌日まで出産を遅らせることができれば、息子は偉大な王となり永遠の名声を保つだろうと予言します。ネスはコンホヴァル川の畔で出産を待ち、生まれた赤ん坊は川に落ちますが、カスバドが拾い上げ、川にちなんでコンホヴァルと名付け、自分の子として育てます。

デアドラの運命の予言

カスバドは、デアドラの出産の場面にも立ち会い、彼女の悲劇的な運命を予言します。しかし、コンホヴァル王はこの予言を聞き入れませんでした。

クー・フーリンへの予言

また、若いクー・フーリンに対し、カスバドは「今日武器を取る者は永遠の名声を得るが、短命に終わるだろう」と予言します。この予言を聞いたクー・フーリンは、すぐに武器を取るためにコンホヴァル王のもとへ向かいます。

カスバドは、アルスター物語群において、予言者、ドルイドとして重要な役割を担い、物語の展開に大きな影響を与えた人物と言えるでしょう。

もう一度検索