カタリーナ・コルナーロ

カタリーナ・コルナーロ：キプロスの女王、その生涯

カテリーナ・コルナーロ（1454年11月25日 - 1510年7月10日）は、15世紀のキプロス女王であり、ヴェネツィア共和国の名門貴族コルナーロ家の出身です。彼女の人生は、政略結婚、王位継承、そして故郷ヴェネツィアへの帰還という、波乱に満ちたものでした。

名門貴族の生まれ

カテリーナは、神聖ローマ帝国の騎士階級でヴェネツィア貴族のマルコ・コルナーロとフィオレンツァ・クリスポの娘として、ヴェネツィアで生まれました。コルナーロ家は、ヴェネツィアの元首であるドージェを4名も輩出した名門であり、カテリーナの兄も要職に就いていました。コルナーロ家とキプロスは、長年にわたる通商関係を通じて深い繋がりがありました。

母親のフィオレンツァは、シロス島の領主ニコラス・クリスポの娘です。ニコラスの家系もまた、レスボス島やトレビゾンド帝国との繋がりを持つ有力な一族でした。

キプロス王妃へ

1458年、キプロス王ジャン2世が亡くなると、王位は彼の娘シャルロットが継承しました。しかし、ジャンの庶子であったジャック2世が王位を主張し、シャルロットを追放して王位を奪取します。政治的基盤が脆弱であったジャック2世は、キプロスと深いつながりのあるヴェネツィアの名門、コルナーロ家の娘カテリーナを王妃として迎え入れることを望みました。この申し出はヴェネツィア側を大いに喜ばせ、両国の交易がさらに活発化し、キプロスではヴェネツィアへの特権が数多く認められました。

1468年、当時14歳だったカテリーナは、ヴェネツィアでジャック2世との代理結婚式を挙げました。数年後、カテリーナはキプロス島に渡り、ジャック2世との正式な結婚生活を始めました。

キプロス女王として

夫婦生活を送って間もない1473年、ジャック2世が急逝し、カテリーナは身ごもっていたジャック2世の遺児を摂政として支えることになります。同年8月、ジャック3世が誕生しキプロス王となりますが、わずか1年足らずで亡くなってしまいました。このジャック3世の死には、さまざまな疑惑が取り沙汰されています。

1474年、カテリーナはキプロス女王として即位します。しかし、当時のキプロス王国は、マムルーク朝の属国のような立場にあり、経済はヴェネツィア商人たちが握っていました。カテリーナは「聖マルコの娘」を名乗り、ヴェネツィアの影響力を維持しようとしました。

1489年、カテリーナはついに退位を余儀なくされ、キプロスの支配権を故郷であるヴェネツィアに譲渡しました。退位の際、彼女は黒いドレスを身にまとい、多くの民に見送られながら、涙を流して王都を去ったと伝えられています。

アーゾロでの晩年

キプロスを失ったカテリーナでしたが、その代償として女王の称号と、アーゾロの女領主としての地位を保証されました。アーゾロの宮廷は、文学や芸術の中心地として発展し、多くの学者や芸術家が集まりました。特に、ピエトロ・ベンボの著作『アーゾロの談論』は、この宮廷の様子を美しく描いています。

カテリーナは1510年、故郷ヴェネツィアで亡くなり、聖使徒聖堂に埋葬されました。

後世への影響

カテリーナの生涯は、オペラや芸術作品の題材として、後世に大きな影響を与えました。フランツ・ラハナーやガエターノ・ドニゼッティが彼女を題材としたオペラを制作したほか、キプロスの芸術大学に「コルナーロ・インスティチュート」と名付けられた機関も設立されています。また、彼女が夏宮として使っていた宮殿も修復され、文化センターとしての活用が予定されています。

カテリーナ・コルナーロは、激動の時代を生きた女性として、今もなお人々の関心を集め続けています。彼女の生涯は、政治的な駆け引き、愛と悲しみ、そして文化的な発展が複雑に絡み合った、魅力的な歴史の一ページとして語り継がれています。

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