カット・ファスト・ボール

カット・ファスト・ボール（カットボール）の概要

カット・ファスト・ボールは野球において非常に重要な球種の一つであり、日本ではカットボールや真っスラとしても知られています。この球種は、一般的な直球の握りから少し人差し指を中指側にずらして握り、投球時にボールを「カット」するように投げることで生成されます。

この投球は、直球とほぼ同じ球速で小さく鋭い変化を見せるため、打者にとっては直球のように感じることが多く、思い違いから空振りや凡打を誘う効果があります。特に、投手の逆側に位置する打者の内角に投げ込むことで、バットを詰まらせることができ、投手にとって非常に有効な戦術とされています。

カットボールは、その変化の種類によって、横に曲がる、斜めに落ちる、縦に落ちるなどと特徴付けられます。中には速球なのに常に特定の変化をしている投手も存在します。これにより、打者はどのようにスイングすれば良いかを見極めるのが難しくなります。

代表的なカットボール投手

カットボールの名手として知られる選手には、マリアノ・リベラ、アンディ・ペティット、ロイ・ハラデイ、ジョン・レスター、ケンリー・ジャンセンなどがいます。特にマリアノ・リベラは、カットボールを駆使した投球スタイルで、MLB屈指のクローザーとして名を馳せました。リベラのカットボールは、90mph（約145km/h）を超える速さで、約20cmの変化を見せることから、空振りを狙った投球が可能でした。

日本に目を向けると、カットボールを広めた選手として武田一浩が挙げられます。彼はファイターズに在籍している際にチームメイトのマット・ウインタースからカットボールの存在を知り、それを習得しました。そののち、武田が中日ドラゴンズに移籍した後、川上憲伸がこの技術を引き継ぎ、一流のカットボーラーとなりました。近年では、ダルビッシュ有、松坂大輔、三浦大輔、藤浪晋太郎、松井裕樹、山本由伸といった選手たちもカットボールを投げており、2000年代からは日本の野球界でもこの球種の使用が一般的になっています。ただし、松井秀喜や伊東勤によると、日本人選手が投げるカットボールはスライダーと似た特性を持つことが多いとのことです。

カットボールの歴史

カットボールは古くから存在していましたが、かつてはくせ球や真っスラと呼ばれることが多く、その名称は2000年代に入って広まり始めました。特に2003年には、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』に組み込まれたことで、より多くの人に認知されるようになりました。野村克也は、日本プロ野球界で初めてカットボールを投げた投手として皆川睦雄を挙げています。

日米のカットボールの違い

日本では、カットボールはスライダーと直球の中間のような球種として認識されがちですが、実際にはボールを切る投げ方から名付けられたものです。アメリカでは、ボールの変化がどの方向であれ「カッター」と呼ばれるなど、認識の違いがあります。このため、日米でのカットボールに対する理解には明確な違いがあると言えるでしょう。

カット・ファスト・ボールは、打者に対して非常に有力な武器となる投球スタイルであり、今後も多くの選手に受け継がれていくことでしょう。

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