カトリック教会のカテキズム

カトリック教会のカテキズムとその要約：信仰の指針

カトリック教会における教えの公式な説明である『カトリック教会のカテキズム』（略称:CCC）は、教皇ヨハネ・パウロ2世によって公布されました。このカテキズムは、ローマ・カトリック教会と、ローマに連なる21の東方典礼カトリック教会の教理を網羅的に解説したもので、1992年にフランス語版が最初に発行され、その後、多くの言語に翻訳されました。

カテキズムの歴史と背景

カテキズムとは、元来「要理教育」を意味し、教義の要約を指します。初期のキリスト教では口伝で伝えられていましたが、次第に書物としてまとめられるようになり、16世紀の宗教改革以降、カトリック教会全体に広まりました。日本でも、第2バチカン公会議以前には『公教要理』が用いられていましたが、公会議以降、要理教育に対する考え方が変わり、子供や洗礼志願者だけでなく、成人信者も学ぶ必要性が認識されるようになりました。

このような背景から、1985年の臨時シノドス（司教会議）で、カトリックの教えを網羅したカテキズムの作成が求められました。教皇ヨハネ・パウロ2世は、この要望に応え、教皇庁教理省長官であったヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿（後の教皇ベネディクト16世）を責任者として、カテキズムの草案作成を委託しました。

『カトリック教会のカテキズム』の内容と構成

1992年に発行されたフランス語版を基に、1997年にラテン語規範版が発行され、これが他の言語への翻訳の基礎となりました。日本語版は2002年に出版されています。

CCCは、以下の四つの主要な要素で構成されています。

1. 信仰宣言: カトリック教会の信仰の基本を解説します。
2. キリスト教の神秘を祝う: サクラメント（秘跡）を中心に、典礼の意味を説明します。
3. キリストと一致して生きる: キリスト者の倫理と道徳について解説します。
4. キリスト者の祈り: さまざまな祈りの形を教えます。

これらの要素は「四つの柱」とも呼ばれ、互いに密接に関連しています。CCCには詳細な脚注がつけられており、関連する教えの参照先や聖書、聖伝、教父の著作などが示されています。聖書に関する章では、「霊的解釈」の重要性が強調され、聖書の逐語的意味と、寓意的、倫理的、神秘的という三つの霊的意味を通して、聖書の理解を深めるべきだと説いています。

『カトリック教会のカテキズム要約（コンペンディウム）』

2005年には、『カトリック教会のカテキズム』の「忠実かつ確実な要約」として、『カトリック教会のカテキズム要約（コンペンディウム）』が教皇ベネディクト16世によって公布されました。これは、問答形式で598の質問と答えによって構成されており、教会の信仰の根本的な要素を簡潔に提示しています。また、各所にカラーの聖画図版とその解説が挿入されており、教理理解を助けています。日本語版は2010年に出版されました。

現代における意義と影響

教皇ヨハネ・パウロ2世が宣言したように、CCCはカトリック教会の外にも関心を呼び起こしました。現代のカトリック教会においては、CCCとその『要約』が要理教育の規範として用いられており、教会の教えをより深く理解するための重要なツールとなっています。

CCCは、教会の教えを体系的に理解するための包括的な解説書であり、信仰生活における指針として、世界中のカトリック信者に利用されています。その内容は、信仰の基本から日常生活における倫理、そして祈りまで、幅広い分野を網羅しており、信仰の理解を深めるための重要な資源です。

このカテキズムは、教会が自ら日々の生活の中で宣言し、祝い、生き、祈っていることを一人ひとりが知ることを可能にし、教会の一致を深める役割を果たしています。また、第2バチカン公会議以前に戻ろうとする動きを批判し、現代における教会の歩みを前進させるための道しるべとなっています。

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