カナ (レバノン)

レバノン南部カナ：歴史と悲劇の村

レバノン南東部に位置するカナ（Qana、アラビア語: قـانـا‎）は、長く複雑な歴史を持つ村です。レバノン方言ではアナーと呼ばれ、古代から現代まで、幾多の出来事を経てきました。特に、イスラエルとの紛争においては、悲劇的な歴史の舞台となっています。

イスラエル軍による空爆：二度の大惨事

カナはイスラエル軍による二度の大規模な空爆の犠牲となりました。

1996年4月18日：「怒りの葡萄作戦」における悲劇
イスラエル軍によるヒズボラに対する軍事行動、「怒りの葡萄作戦」において、カナ村は砲撃を受けました。当時村には国連レバノン暫定駐留軍（UNIFIL）フィジー部隊も駐留しており、この攻撃で、多くの民間人が巻き込まれました。106人の村民が死亡、116人が負傷し、4人のUNIFIL兵士が重傷を負うという惨事となりました。

2006年7月30日：イスラエル・レバノン紛争における空爆
イスラエル・レバノン紛争においても、カナは攻撃を受けました。イスラエル側は、カナから150発以上のミサイルがイスラエル領内に発射されたと主張し、空爆を実施。この攻撃では、多数の民間人が犠牲となり、当初は子供37人を含む56人が死亡したと報じられましたが、後に28人に訂正されました。居住ビルの倒壊により多くの負傷者も出ました。これらの空爆は、国際社会から強い非難を浴びました。

歴史と宗教的意義

カナの歴史は古く、旧約聖書のアシェル族の町として登場します。また、レバノン南部の人々は、このカナを、イエス・キリストが最初の奇跡を行った場所であるカナ（ヨハネによる福音書2:1-11）であると信じています。文化人類学者の菅瀬晶子氏によると、この村には初期キリスト教徒によって手彫りされたとされる洞窟があり、シーア派ムスリムとキリスト教徒が共に生活するカナにおいて、宗教・教派を問わず人々の憩いの場となっています。

ただし、聖書に記されるカナは、現在のイスラエル領内のクファル・カナ (Kfar Kana) 近郊にある別の村であるとする説が有力です。レバノン南部のカナが、聖書に記されるカナと同一であるという主張は、地元住民の信仰に基づくものです。

複雑な現実

カナは、古代の歴史、宗教的信仰、そしてイスラエルとの紛争という複雑な歴史的、政治的状況が重なり合う場所です。二度の大規模な空爆によって、多くの犠牲者が出たという悲劇は、この村の現実を象徴的に示しています。カナの歴史と現在を理解するには、その複雑な背景を理解することが不可欠です。この村が抱える歴史と現実を正しく理解し、平和な未来に向けた努力が求められます。

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