カナ (聖書)

カナは、新約聖書に記述されるガリラヤ地方に存在したとされる町の名です。聖書に登場するカナは、複数の場所が候補として挙げられていますが、特に有名なのはイエス・キリストが最初の奇跡を行ったとされる「カナの婚宴」の舞台となった地です。

旧約聖書にもカナという地名が登場しますが、これはアシェル族の町にあり、現在のツロの南東10kmに位置するカーナであると考えられています。一方で、新約聖書のカナについては、以前はナザレの北東6kmにあるケフル・ケンナが有力視されていました。しかし、近年の研究では、ナザレの北14kmに位置するキルベト・カーナの遺跡が、より有力な候補地として挙げられるようになっています。

「カナの婚宴」は、イエス・キリストが招かれた結婚式で、宴の途中で葡萄酒が足りなくなった際、水を葡萄酒に変える奇跡を行ったとされる出来事です。この奇跡は、キリストの神性を表す重要な出来事として広く知られています。

また、カナはカペナウムの役人の息子の癒しの奇跡が宣言された場所でもあります。病に苦しむ息子を持つ役人がイエスに助けを求め、イエスは遠く離れた場所から癒しを宣言し、その言葉通り息子は癒されたとされています。さらに、十二使徒の一人であるナタナエルもカナの出身であり、イエスの初期の弟子として重要な役割を果たしました。

文化人類学者の菅瀬晶子氏の研究によれば、レバノン南部では、カーナがイエスが最初の奇跡を行ったカナであると信じられており、同地には初期キリスト教徒が手彫りした洞窟が残っているとのことです。このカーナには、シーア派のムスリムと一部のキリスト教徒が居住していますが、洞窟は宗教や宗派に関わらず、地域の人々の憩いの場として利用されています。このように、カナは歴史的な出来事の舞台としてだけでなく、現代においても信仰や文化の面で重要な場所としての意味を持ち続けています。

参考文献：
『新聖書辞典』いのちのことば社、1985年

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