カナディア CL-84

カナディア CL-84: ダイナヴァートの誕生

カナディア CL-84は、かつての王立カナダ空軍のために開発されたVTOL（垂直離着陸）機で、愛称は「ダイナヴァート」。この名称は、ダイナミックとヴァーティカルを組み合わせた造語で、技術的な進歩を象徴しています。この機体は、空軍に新たな運用能力を付与し、未来の航空機設計に影響を与えました。

機体の設計

CL-84は、主にティルトウイング方式を採用した垂直離着陸機であり、2基のエンジンが取り付けられた主翼は最大で100度の角度に変更可能です。この独特な設計により、主翼を垂直に近い角度にすることでホバリングが可能になり、通常の航空機としての飛行性能も維持されています。さらに、テイルローターを装備しており、垂直方向の推力を生み出します。

機体の操縦系統は、一般的な航空機と同様ですが、ホバリング時には特に優れた操縦性が求められます。具体的には、テイルローターがピッチを、左右のプロペラがバンクを、そして左右のフラッペロンがヨーを制御します。このため、操縦者はホバリング時でも安定した感覚を保ちながら操作を行うことができます。

さらに安定性を向上させるために、安定増強システム（SAS）が実装されており、このシステムによりほとんどの操縦が自動的に補正され、パイロットが手放しでもホバリングができるほどです。乗員はパイロット2名に加え、最大で12名の兵員を搭載することができるため、軍用機としての能力も兼ね備えています。

開発と試験

1963年に試作が決定された後、わずか2年で試作機が完成し、1965年5月7日にホバリングによる初飛行が行われました。その後12月には水平飛行での離陸も成功しました。1966年にはホバリングから水平飛行への転換に成功し、技術的な進展が見られました。しかし、試作1号機は306回目のテスト飛行中に突如としてコントロールを失い、墜落するという事故が発生しましたが、パイロット2名は射出座席で無事脱出できました。この事故の原因は片方のプロペラの故障と考えられています。

試作機の改良版であるCL-84-1は、胴体が延長され、エンジンが強化された3機が製造されました。その後、アメリカ海軍の強襲揚陸艦グアムでの試験や、ペンタゴンの前でのデモンストレーションが行われるなど、1974年までに多くのテストが実施されました。

カナディアはCL-84を基にした派生機としてガンシップや軽輸送機などを開発しましたが、ヘリコプターに対する優位性を証明できなかったため、量産には至りませんでした。これにより、CL-84は試作機としての役割を終えることとなりました。

要目

• - 全長: 16.34 m
• - 全幅: 10.56 m
• - 全高: 4.34 m（主翼水平時）、5.22 m（主翼垂直時）
• - 空虚重量: 3,980 kg
• - 最大離陸重量: 6,577 kg（短距離滑走離陸時）、5,715 kg（垂直離陸時）
• - エンジン: ライカミング T53 ターボシャフトエンジン（1,500 軸馬力（出力1,100 kW）×2基）
• - 最大速度: 517 km/h (M0.42)
• - 巡航速度: 497 km/h (M0.41)
• - 航続距離: 547 km
• - 乗員: 2名

このように、カナディア CL-84は当時としては先進的な技術を搭載した航空機であり、将来の航空機設計に重要な影響を与えました。

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