カバー (マヤ遺跡)

カバー遺跡の概要

カバー（Kabah）は、メキシコのユカタン州に位置する古代マヤ文明の重要な遺跡です。「強い手」を意味するこの名前は、遺跡の歴史を語る上で興味深いものとなっています。カバーは、ウシュマルなどのプウク式建造物と並んで、特にその建築スタイルと歴史的な背景から注目されています。

歴史的背景

遺跡の形成期は紀元前600年から300年とされており、その頃から人々が定住を開始しました。しかし、カバーが政治的および経済的に重要な都市として機能し始めたのは、古典期の終末期、つまり800年から1000年の間でした。この地域の他のプウク文明の都市と同様に、カバーも11世紀の初めに放棄されてしまいます。

遺跡の中心部は、東西に分かれた3つの建築群から成り立っています。中央には祭祀センターがあり、東側と西側には支配者層が住む宮殿が位置しています。しかし、東側のグループ以外は、ほとんど調査や復元が行われていません。特に、中央グループに属する神殿ピラミッドは、20メートルを超える高さを誇るカバー最大の建造物ながら、未発掘の状態にあります。

建築と特徴

東側の建物群は、比較的良好に復元されており、プウク式建築の特徴を色濃く残しています。中でも特に注目されるのは、250個ものチャク神の仮面で飾られたファサードを持つ宮殿「コズ・ポープ」です。コズ・ポープはカバーでもっとも有名な遺構であり、その壮麗さは訪れる人々を魅了します。

また、西側のグループには赤い手の壁画が発見された建物もあり、神秘的な雰囲気を醸し出しています。この西側の建物の側柱には、9世紀の日付のある碑文が残存しており、当時の文化を知る重要な手がかりとなっています。

さらに、カバーとウシュマルの間には約20キロメートルに及ぶ堤道（サクベ）が延びており、終点には美しいアーチが建設されています。これにより、当時の人々がいかに交易や移動を重視していたかを伺い知ることができます。

調査の歴史

カバー遺跡の存在は、1843年にジョン・ロイド・スティーヴンズとフレデリック・キャザーウッドによって初めて報告されました。その後、デジレ・シャルネやテオベルト・マーラーなど、数多くの研究者がこの地を訪れ研究を続けました。1990年代には、ラモン・カラスコが率いるメキシコ国立人類学歴史研究所（INAH）によって発掘調査が行われ、多くの新たな発見がもたらされました。

21世紀に入ると、INAHのロールデス・トスカノ・エルナンデスらによる調査が進められ、王室の台所の跡が発見されました。この調査によって、ニシュタマリゼーションが行われていたこと、またかまどやメタテなどの石器、多数の土器も発見され、当時の生活様式を知る貴重な情報が得られています。

カバー遺跡は、その魅力溢れる歴史と文化的背景から、古代マヤ civilizationを学ぶ上で欠かせない場所となっています。そして、今なお続く調査によって発見される新たな発見が、この遺跡の重要性をさらに深めています。

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