カフジ

カフジ：知られざる中立地帯の歴史と石油産業

カフジは、サウジアラビアとクウェートが共同で管理する中立地帯に位置する都市です。アラビア語で「カフジ岬」を意味するこの地は、豊かな石油資源に恵まれ、その歴史は石油産業と深く結びついています。

石油とともに発展した街

1950年代、日本のアラビア石油がカフジ沖の油田採掘権を獲得し、海底油田の開発が始まりました。これにより、カフジは石油産業を中心に発展を遂げ、多くの人々がこの地に集まりました。2005年の時点で、人口は約6万5000人に達し、そのほとんどが石油関連企業の職員とその家族でした。

カフジに勤務する人々は、クウェートとサウジアラビアを自由に移動できる特別な通行証（イガマ）を取得できます。しかし、観光ビザは発行されていないため、一般の観光客が訪れることは難しいのが現状です。

海難事故と採掘権の変遷

1965年8月5日には、カフジ沖で日本の朝日揮油がチャーターしたタンカー「海蔵丸」が爆発するという痛ましい事故が発生しました。この事故により、死者・行方不明者7名、負傷者35名という甚大な被害が出ました。

2000年、アラビア石油の採掘権契約が終了し、その後はサウジアラビアとクウェートが折半出資する企業が石油採掘事業を引き継いでいます。

湾岸戦争の傷跡

カフジは、湾岸戦争の戦火にも見舞われました。1991年1月29日、イラク軍がクウェートに侵攻した後、カフジの石油タンクが攻撃を受け炎上しました。この攻撃は、クウェート領内から侵入したイラク軍の機械化師団によって行われ、T-55戦車や装甲兵員輸送車に支援された部隊がカフジの守備隊を圧倒しました。

これに対し、アメリカ中央軍はA-10攻撃機や対戦車ヘリコプター、海兵隊の地上部隊を投入し反撃。イラク軍は翌日にはカフジから撤退しましたが、この戦いによって街は大きな傷跡を残しました。

現在のカフジ

湾岸戦争の傷跡から立ち直ったカフジは、現在も石油産業を中心に発展を続けています。サウジアラビアとクウェートという二つの国に挟まれた特異な地理的条件を持つカフジは、両国の協力によって平和が維持され、地域の安定に貢献しています。

しかし、観光客が容易に立ち入れる場所ではないため、その実態はあまり知られていません。カフジは、石油というエネルギー資源を背景に、複雑な歴史を歩んできた都市なのです。

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