カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像

カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像

作品概要

『カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像』は、イタリア盛期ルネサンスを代表するヴェネツィア派の巨匠、ティツィアーノ・ヴェチェッリオによって1545年から1546年頃に描かれた油彩画です。この作品は、カンヴァスに描かれ、現在ではナポリのカポディモンテ美術館に所蔵されています。

この肖像画は、教皇パウルス3世の年齢を考慮すると、『教皇パウルス3世の肖像』の直後に、そして『教皇パウルス3世とその孫たち』の前に制作されたと推測されています。この推測は、教皇の見た目の年齢に基づいています。本作は、75歳当時の最初の肖像画よりも老けて見えますが、孫たちと一緒に描かれた肖像画よりも若い印象を与えます。

ジョルジョ・ヴァザーリの記録によると、この作品は教皇空位期間管理局の局長であり、パウルス3世の孫であったグイド・アスカーニオ・スフォルツァ・ディ・サンタ・フィオーラ枢機卿のために制作されました。最初のパウルス3世の肖像画とは異なり、本作では教皇がカマウロと呼ばれる帽子を被り、巻物を手に持っています。背景には風景が描かれており、教皇の姿を際立たせています。

カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像画は、他にもウィーンの美術史美術館とサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されていますが、これらの作品がティツィアーノの真筆かどうかは定かではありません。

来歴

この作品は、当初、ファルネーゼ家の美術収集家であり、蔵書管理人であったフルヴィオ・オルシーニによって所有されました。その後、オドアルド・ファルネーゼの手に渡り、ローマのファルネーゼ宮殿にあった他のティツィアーノによる家族の肖像画とともにコレクションに加えられました。

17世紀になると、この作品を含むローマのファルネーゼ家のコレクションはパルマに移され、ティツィアーノが描いた『アレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿の肖像』や『ピエール・ルイージ・ファルネーゼの肖像』と並んで展示されました。その後、同じパルマのピロッタ宮殿に移されました。

1734年頃、スペイン王カルロス3世が母エリザベッタ・ファルネーゼの死後、王位に就くと、この作品を含むコレクションはナポリに移されました。作品は、カポデイモンテ宮殿、ナポリ王宮、ストゥーディ宮殿と移り変わり、最終的にカポデイモンテ宮殿に戻されました。

かつて、本作と『ピエール・ルイージ・ファルネーゼの肖像』は保存状態が悪く、工房作に格下げされていました。しかし、20世紀半ばに行われた修復と調査によって、本作は新しい支持体に移動され、ティツィアーノの真筆であることが再確認されました。

作品の特徴

• - カマウロ: 教皇が着用している帽子で、この作品の大きな特徴です。
• - 巻物: 教皇が手に持っている巻物は、彼の知識や権威を象徴しています。
• - 背景の風景: 教皇の背後に広がる風景は、作品に奥行きと自然な雰囲気を与えています。
• - 年齢表現: 教皇の顔の描写から、ティツィアーノが教皇の年齢を正確に捉えようとしたことがわかります。

この肖像画は、ティツィアーノの卓越した技量と、教皇パウルス3世の威厳と知性を伝える力強い作品として、今日まで多くの人々を魅了しています。

ギャラリー

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参考文献

* (イタリア語) Guida al Museo Nazionale di Capodimonte, Editrice Electa (2006).

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