カムフーバー・ライン

カムフーバー・ラインの概要

カムフーバー・ライン（英: Kammhuber Line）は、1940年7月にドイツ国防軍空軍のヨーゼフ・カムフーバー大佐が提唱した夜間防空システムを指します。このシステムは、連合軍の爆撃機に対抗するため、レーダー施設とサーチライトを組み合わせた管制区と夜間戦闘機を連携させるものであり、カムフーバー自身はそのシステムを「ヒンメルベット」と名付けました。各管制区は、夜間戦闘機が有視界で目標となる爆撃機隊を捕捉することを目的に設計されていました。

カムフーバー・ラインは初期には連合軍の爆撃機の戦術に対して効果的に対応できましたが、イギリス空軍の分析が進むにつれ、やがて対抗策を講じられることになりました。特に1942年のケルン爆撃では、数千機の爆撃機が一斉に攻撃する「ボマー・ストリーム」戦術が用いられ、ドイツの防空システムは圧倒されました。

システムの構成

このシステムでは、南北32km、東西20kmの範囲をカバーするレーダー施設が、デンマークからフランス中部にかけて3層に整然と配置されました。各管制区は、「ヒンメルベット」と呼ばれる名のもとに、探知距離約100kmを誇るフライヤレーダーと、主サーチライト、手動サーチライト群を備えていました。また、各管制区には本務機と予備機として1機ずつの夜間戦闘機が配置され、これにより即応体制が整えられていました。使用される夜間戦闘機には、ドルニエ Do 17Z-10やユンカース Ju 88C、メッサーシュミット Bf110などがありました。

空撃による敵機の迎撃はこれらのサーチライトを活用し、敵機が探知されると夜間戦闘機がその照射範囲に向かい対処を行うという流れでした。無線を通じて指揮官が戦闘指揮を行い、迎撃支持装置も導入されましたが、前述の通り、これによる効果は限られていました。

連合軍の対抗策

連合軍は直ちにカムフーバー・ラインの戦略を分析し、効果的な対抗手段を模索しました。イギリス空軍爆撃司令部は、当初はパイロットの裁量に頼る形で行動していたため、敵の防空システムに対抗するための集中的な戦術を必要としていました。これに応じて、彼らはボマー・ストリーム戦術を採用し、特定の管制区を狙うように配置した爆撃機の列を編成しました。この戦術は、カムフーバー・ラインの迎撃能力と合致し、彼らの一撃を圧倒する戦略的アプローチとなりました。

1942年の初めに導入されたGEE無線航法は、さらに同調を可能にし、爆撃機は決まった経路を辿ることができるようになりました。これにより、カムフーバー・ラインは弱体化を余儀なくされました。しかし、ドイツ空軍は新たに強化されたレーダー網を導入することで抵抗を試み、当初のレーダーの探知範囲を拡大するなどして、再び連合軍の空襲に対して防御力を強化しました。

さらなる発展

カムフーバー・ラインは、戦争の進展と共に適応努力を続け、戦況によって新たな技術が導入されていきました。一方で、連合軍もまた新たな手段を講じ、レーダーの妨害技術や新しい戦術で反撃を試みました。例えば、チャフという偽装手段や、電波ジャミングによる妨害行動などが実施され、これによりドイツの防空準備を浸食していきました。

このような戦術の応酬の中で、カムフーバー・ライン自体も数回の改良を経てその役割を果たしていましたが、1944年10月にはドイツ国防軍の防空能力は一時的に失われることとなり、連合軍の攻撃はますます有効的になっていきました。

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