カラスザンショウ

カラスザンショウ（烏山椒）

カラスザンショウ（学名: Zanthoxylum ailanthoides）は、ミカン科サンショウ属に分類される落葉高木です。日本を含む東アジアに広く分布し、山地や海岸付近に自生します。

特徴

形態: 樹高は15〜25メートルに達し、枝を大きく広げるのが特徴です。樹皮は灰褐色で、短く鋭い棘があります。老木になると、棘の痕跡がいぼ状に残ります。葉はニワウルシに似た奇数羽状複葉で、小葉は広披針形、葉の裏面は白っぽくなっています。葉には油点があり、独特の香りを発します。
花: 花期は7〜8月で、雌雄異株です。小さな花が多数咲き、紅紫色の球形の実をつけます。実には黒い種子が露出しており、特有の香りとともに辛味があります。
生態: 沿岸地や山野に生育し、伐採跡地などの裸地にいち早く生育する先駆植物です。アゲハチョウ科の蝶の食草となります。

分布

日本国内では、本州（青森県むつ市以南）、四国、九州、沖縄、小笠原諸島に分布しています。国外では、朝鮮半島南部、中国、台湾、フィリピンなどに分布しています。

利用

食用: 一般的には食用とされませんが、若芽や若葉は天ぷらとして食されることがあります。
蜜源: 清涼感のある独特の風味を持つ蜂蜜が採れるため、蜜源植物としても重要です。
薬用: 葉は駆風薬、果実は健胃薬として利用されます。
その他: 枝はサンショウと同様にすりこぎとして利用されます。ただし、棘の数がサンショウよりも多いため区別できます。

食草とする蝶

カラスザンショウは、以下の蝶の食草となります。

カラスアゲハ
ミヤマカラスアゲハ
モンキアゲハ
ナミアゲハ
オナガアゲハ
クロアゲハ

類似種との区別

葉の大きさがサンショウ属の他の種よりも大きいため、容易に区別できます。また、幹の棘と葉の香りで、他の羽状複葉を持つ樹木と区別できます。

その他

サンショウと異なり、アルカロイドを含むため、イヌザンショウとともにイヌザンショウ属 (Fagara) に分類されることがあります。

学名の ailanthoides は、「シンジュ（ニワウルシ属）のような」という意味を持ちます。

中国名は「椿葉花椒」「食茱萸」と表記されます。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年、121頁。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年、247頁。
森上信夫・林将之『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版、2007年。

関連項目

* サンショウ

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