ニワウルシ

ニワウルシ（庭漆）とは

ニワウルシ（学名: Ailanthus altissima）は、ニガキ科に属する落葉性の高木です。別名としてシンジュ（神樹）とも呼ばれています。和名に「ウルシ」とつきますが、ウルシ科の植物とは全く異なる種類で、かぶれる心配はありません。中国では「臭椿」と呼ばれ、これは葉や枝を傷つけると独特の悪臭を放つことに由来します。

名称の由来

ニワウルシという和名は、ウルシに似ているものの、かぶれる心配がないため庭に植えられることに由来します。一方、シンジュという名前は、英語の「Tree of Heaven（天国の木）」やドイツ語の「Götterbaum（神の木）」という、その木の高さや成長の早さを強調する名称を和訳したものです。これらの名前は、ニワウルシの生命力や成長の速さを象徴しています。フランスでは、かつて「日本のウルシ」と誤って命名されましたが、後に「日本のウルシもどき」と訂正されました。学名の属名「Ailanthus」は、インドネシアのモルッカ諸島の言葉で「空と同じくらい高い」という意味の「ai lantit」に由来しています。

分布と生育環境

ニワウルシは中国北部を原産とし、日本には明治初期に渡来しました。現在では、街路樹としてだけでなく、河川敷などで野生化している姿も見られます。ヨーロッパやアメリカにも導入され、特にアメリカでは19世紀には手軽に育てられる木として普及しました。しかし、その生命力の強さから、乾燥地や荒れ地、痩せ地などでも容易に生育し、急速に広がることが問題となっています。また、シンジュサンの食樹であることから、養蚕目的で栽培されたものが各地で野生化する原因にもなりました。他の植物の成長を妨げるアレロパシー効果を持つため、侵略的外来種として警戒されています。農業害虫であるシタベニハゴロモが繁殖することも、ニワウルシが問題視される理由の一つです。

形態・生態

ニワウルシは落葉広葉樹の高木で、非常に成長が早く、樹高は10〜20メートル、大きなものでは25メートル以上にも達します。幹は円柱状で真っ直ぐ伸び、枝は太く、樹皮は灰白色で滑らかですが、成長すると縦波状の筋が現れます。一年枝は赤褐色で、皮目が多く見られます。葉は大型の奇数羽状複葉で、小葉は数十枚にも及び、長さは1メートル近くになることもあります。

花期は6月で、雌雄異株です。夏には緑白色の小さな花を円錐状に多数つけます。雄花は虫媒花で、花粉を媒介する昆虫を引き寄せるために独特の悪臭を放ちます。雌株には、秋に琥珀色から褐色に熟す翼果ができます。この翼果は披針形で中央に種子があり、風に乗って遠くまで運ばれます。冬には枯れた翼果が枝に残っているのが特徴です。

冬芽は平たい半球状で小さく、3〜4枚の鱗芽に覆われています。葉痕は大きく心形で、維管束痕は葉痕の縁に沿って並んでいます。

利用

成長が早いことから、ニワウルシは庭木や街路樹、器具材として利用されます。中国では、根皮や樹皮が「樗白皮（ちょはくひ）」という生薬として、解熱、止瀉、止血、駆虫などの目的で使用されています。

注意点

ニワウルシは、その生命力の強さから、他の植物の生育を妨げる可能性があります。そのため、庭に植える際には、その特性を理解した上で、適切な管理を行うことが重要です。また、繁殖力が強く、一度根付くと駆除が難しい場合もあるため、注意が必要です。

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