カラリパヤット

カラリパヤットについて

カラリパヤット（Kalarippayattu）は、インド南部のケララ地方に起源を持つ伝統的な武術であり、古代から今日まで受け継がれてきています。サンスクリット語の「カルーリカ」やドラヴィダ語の「パヤット」といった言葉が由来となっており、特に「カラリ」は道場や寺院の前庭を意味します。ケララの主要なカーストであるナイルの武術とされるものの、地元のバラモンや他宗教の人々もこの技術を学んできました。

カラリパヤットでは、脱力した身体を使った蹴り技や素手での打撃技、そのほか逆関節を決めたり投げたりするスキルが重視されます。方法としては、約19種類の蹴り技があり、また剣、盾、棒、そして特に特徴的な鞭のようにしなる長剣『ウルミ』を含む18種類の武器を用いる技術もあります。

この武術の指導者であるグルカルは、マルマン医療やウリチルと呼ばれるオイルマッサージなどの伝統医療の専門家でもあります。カラリパヤットは、ケララにおける伝統舞踊劇であるカタカリやヤクシャガーナ、パダヤニにも影響を与えており、舞台芸術と深く結びついています。日本では、アリナミンのテレビコマーシャルでその蹴り技が紹介され、多くの人々に知れ渡ることとなりました。このように、カラリパヤットは「動くヨーガ」とも称されるほどで、身体運動としても高い評価を得ています。

歴史と伝説

カラリパヤットの歴史は、ドラヴィダ人の住む地にアーリア人が侵入したことから始まります。南部のケララでは、ドラヴィダ文化において武道が尊重され、様々な武術が発展。アーリア人の武術が融合し、カラリパヤットの基礎が形成されたとされています。伝説によると、座禅の僧・達磨大師がインドの武術を中国に伝え、その技術が現在の少林拳へと進化したとも言われています。

16世紀にはカラリパヤットが最盛期を迎えますが、西洋からの銃器の導入や、イギリスの弾圧により一時は衰退しました。しかし、20世紀に入り、C.V.ナラヤナン・ナイールにより復興が途絶えられることとなります。彼は近代カラリパヤットを整備し、多くの弟子を育成しました。ナイールは嘉納治五郎のような存在として、現在でもその功績は評価されています。

流派

カラリパヤットには、地域による特長が見られ、ワダッカン（北派）とテッカン（南派）という二つの主な流派があります。

• - ワダッカン（北派）: この流派は聖仙パラシュラーマに由来するとされ、厳格な稽古体系が特徴です。基礎体力の強化から始まり、武器術と素手の技術を身につけた後、奥伝として瞑想やツボ療法が伝授されます。

• - テッカン（南派）: アガスティアを始祖とするこの流派は、屋外での稽古が多く、より自由な指導が行われます。主に素手の技術が中心で、伝統的なドラヴィダ武術の形を色濃く残しています。

作品と関連

カラリパヤットは、映画をはじめとする様々なメディアでも取り上げられています。また、シランバムやヴァルマ・カライといった他のインド武術と共に伝統的な身体技術として認識されています。これにより、カラリパヤットは単なる武術としてだけでなく、文化的な遺産としても重要視されています。

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