カラ競馬場

カラ競馬場：アイルランド競馬の聖地

アイルランド、キルデア県に位置するカラ競馬場は、同国の競馬において揺るぎない地位を築く歴史的名所です。ダブリンから南西へ約40キロメートル、広大な330万平方メートルの敷地には、近代的なスタンドやレストラン、さらには競馬博物館も備えられています。

古くからの歴史と伝統

カラ競馬場の歴史は深く、アイルランド競馬の発祥の地として広く知られています。古代から、王族や貴族のみならず、一般庶民も集会や祭事の余興として競馬を楽しんでいたという記録が残っています。特に、現在のカラ競馬場周辺は「リフィのカラ」や「カラ・オブ・レーシズ」と呼ばれ、競馬の盛んな地域として知られていました。ゲール語で「Curragh」は「馬を走らせる場所」を意味し、この地が古くから競馬と深く結びついていたことを物語っています。3世紀には戦車競走が行われていたという説もあり、現代競馬に近い形式の競走は17世紀後半には行われていたと考えられています。

1741年には、英国の競馬成績書を出版していたジョン・チェニーがカラ競馬場の開催を記録しており、この頃から記録が明確に残されています。18世紀後半には、当時の総督クラレンドン伯がニューマーケット競馬場よりも立派な競馬場と評しており、既にカラ競馬場は国際的な評価を得ていたことが分かります。1868年には議会によって、カラ一帯が共有放牧地として認められ、競馬と調教のための利用が保護されました。これは、現在のカラ競馬場の礎となる出来事でした。1866年には、アイルランドダービーが初めて開催されました。

2017年から2019年にかけては、大規模な改修工事が行われ、新たなスタンドやレストラン、競馬博物館が建設されました。これにより、カラ競馬場は歴史的な面影を残しつつ、現代的な設備も整えられた、快適で魅力的な競馬場へと進化しました。

コースとレース

カラ競馬場のコースは、芝の平地コースのみです。馬蹄型で右回り、最大3200メートルのレースが可能です。アイルランドでは、カラ競馬場とレイタウン競馬場のみが平地コース専門で、他の競馬場は平地と障害コースを併設しているのが一般的です。

コースは、向正面の「プレートコース」、「ダービーコース」、「内回りコース」、スタンド側の「直線コース」(最大1400メートル)、「1600メートルコース」から構成されています。直線コースは、最初の部分は平坦ですが、最後の2ハロンは緩やかな上り坂が続きます。急坂で有名なエプソム競馬場ほどではありませんが、どのコースも高いスタミナが求められる、挑戦的なレースとなっています。

主要競走

カラ競馬場では、アイルランドで施行されるG1競走13のうち11が開催されています。特に、アイルランドの5大クラシック競走は全てカラ競馬場で施行されます。この事実からも、カラ競馬場がアイルランド競馬を象徴する存在であることが分かります。数々の名馬がここで歴史に名を残し、今後もアイルランド競馬の聖地としてその役割を果たしていくでしょう。

参考文献

合田直弘; 秋山響，石川ワタル，斎藤修，須田鷹雄，大岡賢一郎，堀正，TIS 著、海外競馬編集部 編『海外競馬完全読本 2006-2007』東邦出版、2006年
ジョン・ウェルカム 著、草野純 訳『アイルランド競馬史』日本中央競馬会国際室、1988年
本村凌二『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』中央公論新社、2016年
渡辺敬一郎; サラブレッドインフォメーションシステム『海外競馬に行こう!―新ヨーロッパ競馬場ガイド』東邦出版、2002年
* 石川ワタル; 奥野庸介，石川ワタル，合田直弘，サラブレッドインフォメーションシステム『海外競馬完全読本 世界の競馬の仕組みが詳しく分かる』東邦出版、2002年

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