カリディケー

ギリシャ神話の伝承において、「カリディケー」という名前を持つ女性は複数存在しますが、特に有名なのは以下の三名です。

ケレオスの娘のカリディケー

エレウシースの地を治める王ケレオスと妃メタネイラの間に生まれた娘の一人です。彼女にはクレイシディケー、デーモー、カリトエーといった姉妹がいました。娘を探してさまよっていた女神デーメーテールが、エレウシースの乙女の井戸のほとりで休息していた際、水を汲みに来たカリディケーたちは女神の姿に気づかず、親切に言葉をかけました。この出来事がきっかけとなり、デーメーテールはケレオスの館に招かれ、王子デーモポーンの乳母を務めることになります。女神はデーモポーンを不死にしようと試みますが、その光景を目撃したメタネイラの悲鳴によって中断され、真の姿を現したデーメーテールは秘儀の創設を命じました。カリディケーたち姉妹の素朴な親切心が、エレウシースの密儀へと繋がる重要な局面に関わったと言えます。

ダナオスの娘のカリディケー

アルゴスの王ダナオスの五十人の娘たち、通称ダナイデスの一人です。彼女の母はクリノーと伝えられており、オイメー、ケライノー、ヒュペルヒッペーという同母の姉妹がいました。父ダナオスは、兄弟であるエジプト王アイギュプトスの息子たちとの結婚を強制されましたが、結婚初夜に夫たちを殺害するよう娘たちに命じました。カリディケーと彼女の姉妹は、それぞれアイギュプトスとヘーパイスティネーの子であるパンディーオーン、アルベーロス、ヒュペルビオス、ヒッポコリュステースと結婚しましたが、他のダナイデスと同様に父の指示に従い、夫を手にかけました。ダナイデスの中で唯一夫を殺さなかったヒュペルムネーストラーを除き、彼女たちは冥府で永遠に底のない桶に水を注ぎ続ける罰を受けたと言われています。

テスプローティアー地方の女王のカリディケー

トロイア戦争を終え、故郷イタケー島へ無事帰還したオデュッセウスは、ペーネロペーの求婚者たちを討伐した後、海神ポセイドーンの怒りを鎮めるための供犠を捧げるべくテスプローティアー地方を訪れました。そこで彼はその地の女王であるカリディケーと出会います。カリディケーはオデュッセウスに心を奪われ、彼に結婚してこの国の王となることを求めました。オデュッセウスはこの申し出を受け入れ、二人の間には息子のポリュポイテースが誕生しました。オデュッセウスは女王の夫として、また王としてこの地を統治し、周辺国との戦争を指揮して自国の勢力を広げました。散逸した叙事詩『テーレゴネイア』の記述によれば、オデュッセウスが戦ったのは近隣国との戦いであり、この戦いの最中にカリディケーは命を落としたとされています。女王の死後、オデュッセウスは息子ポリュポイテースに王位を譲り、再び故郷イタケーへと帰還したと伝えられています。

これらのカリディケーは、それぞれ異なる神話の文脈で重要な役割を果たしており、一方はデーメーテールの神話に、一方はダナイデスの悲劇に、そしてもう一方はオデュッセウスの冒険譚に関連づけられています。

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