ポリュポイテース

ポリュポイテース（古希: Πολυποίτης）は、ギリシャ神話に語り継がれる人物の一人であり、特に高名な英雄として知られています。彼の名は長母音を省略してポリュポイテスとも表記されることがあります。

彼の出自はラピテース族の王家であり、偉大な王ペイリトオスと、その妃ヒッポダメイアの間に生まれた息子です。父ペイリトオスは、親友テーセウスと共に様々な冒険を繰り広げたことでも名高い人物です。

ホメロスによる古代ギリシャの叙事詩『イーリアス』によれば、ポリュポイテースの誕生には特別な背景がありました。彼の生まれた日は、父ペイリトオスが異形の種族であるケンタウロス族を、彼らの故郷であるペーリオン山から追放した、いわゆる「ケンタウロマキア」の勝利の記念すべき日であったと伝えられています。この記述は、彼の誕生がただならぬ出来事と結びついていたことを示唆しています。

彼はまた、スパルタ王テュンダレオースの娘であり、後にトロイア戦争の原因となる絶世の美女ヘレネーに求婚した、数多くのギリシャ世界の有力な英雄たちの一人でもありました。これは、彼が当時のギリシャ社会において、影響力を持つ重要な人物であったことの証左と言えるでしょう。

その後勃発した長きにわたるトロイア戦争には、アカイア勢（ギリシャ連合軍）の一員として参加しました。彼は戦友であるレオンテウスと共に、軍の指揮官を務めました。彼らは共に、テッサリア地方に位置する都市アルギッサやギュルトーン、あるいはその周辺地域から集められた軍勢を率いて、総勢40隻にも及ぶ船団を編成し、トロイアへと向かいました。これはトロイア戦争に参加したギリシャ勢の中でも、少なくない規模の兵力を指揮していたことを意味します。彼らが戦争中にどのような具体的な功績を上げたかについては、『イーリアス』などの文献に詳細な記述は少ないものの、将として大船団を率いたことから、アカイア軍の中で重要な役割を担っていたことが推測されます。

トロイア戦争が終結し、アカイア勢が故郷への帰途につく中で、ポリュポイテースは戦友レオンテウスと共に、故郷への直接の帰還を選ばなかったと伝えられています。彼は、名高い預言者カルカースや、医術に非常に長けていた兄弟ポダレイリオスとアムピロコスといった他の英雄たちと共に、小アジア（現在のアナトリア半島）のイオニア地方に位置する都市コロポーンへと旅立ったとされています。彼らがコロポーンへ移住した目的や、その後の彼らの運命について、詳細な記録は必ずしも多くありませんが、これはトロイア戦争後の英雄たちの複雑な運命の一端を示すエピソードとして語り継がれています。

なお、ギリシャ神話の世界には、このペイリトオスの子ポリュポイテース以外にも、同名の人物が存在することが確認されています。例えば、光明と芸術の神アポローンの息子とされるポリュポイテースや、オデュッセウスがトロイア戦争から帰還するまでの間に、彼の妻ペーネロペーに強引に求婚した多数の男たち（求婚者たち）の中の一人として名前が挙げられるポリュポイテースなどが知られています。これらの同名人物と、ラピテース族の王ペイリトオスの子であるポリュポイテースとは、それぞれ異なる存在であり、神話を読み解く際には混同しないよう注意が必要です。

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