デーモポーン

デーモポーンの神話

デーモポーン（Dēmophōn）は、古代ギリシャの神話に登場する人物で、アテーナイの王として知られています。彼は伝説的な英雄テーセウスとパイドラーの子供であり、兄弟のアカマースと共に多くの冒険を経験しました。特に彼の名はトロイア戦争に参加したことで知られています。この戦争において、デーモポーンはトロイアの木馬に入った数少ない戦士の一人であり、アテーナイに向かう大きな歴史的なイベントの一部となりました。

トロイア戦争と家族の情

デーモポーンの物語は、彼が祖母のアイトラーをトロイアから連れ戻すためにトロイアに赴いたことから始まります。アイトラーはヘレネーの付き添いとしてトロイアに亡命していたため、デーモポーンは彼女を救いに行きました。彼の勇敢な行動は、戦争において彼の重要性を示すものでもあります。

そして、トロイア戦争の後、デーモポーンはトラキアに立ち寄り、その地の王の娘ピュリスと結婚しました。しかし、幸せな結婚式の翌日、彼は急遽出発しなければならなくなりました。アポロドーロスの記述によると、彼は自らの意思で去ることを選んだとも言われています。デーモポーンは、後に妻をアテーナイに連れて帰る約束をし、彼女から大切な小箱を受け取ります。この小箱にはレアー神の聖物が納められており、彼女は絶望的な状況でなければ開けてはいけないと警告しました。

妻ピュリスの悲劇

デーモポーンが去った後、妻のピュリスは毎日海辺に通い、彼の帰りを待ち続けました。しかし、約束の期日が過ぎても彼は戻らず、彼女の心は次第に絶望に変わりました。ついに彼女は悲しみのあまり、自ら命を絶ってしまいました。この瞬間が、デーモポーンの運命を大きく変えるきっかけとなります。

小箱の秘密

ある日、デーモポーンは好奇心から小箱を開けてしまいました。すると、恐れと驚きが彼を襲い、彼は馬に飛び乗って逃げ出しました。しかし、その興奮のあまり落馬してしまい、剣の上で命を失いました。このエピソードは、彼の悲劇的な運命を裏付けるものであり、彼は結局失った妻との再会を果たせないままでした。

変身と再生

別の伝説では、デーモポーンはトラキアに戻ったところ既に妻は亡くなっており、彼女は死後にアーモンドの木に姿を変えたとされています。デーモポーンがこの木を抱くと、驚くことに花を咲かせ始めました。この神話は、愛と悲しみの深いテーマを表現しており、デーモポーンの運命を深く考察する機会を提供しています。

系図

デーモポーンの家系は、ギリシャ神話の中でも特に複雑で興味深いものです。彼は、テーセウスの血筋を引く主要な人物であり、彼の物語は神話の中で重要な位置を占めています。最終的には、彼と彼の妻の悲劇的な運命が、ギリシャ神話における愛の深さと悲しみを象徴しています。

参考文献

• - アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）

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