カリン (バラ科)

カリン（花梨・花櫚・榠樝）

カリン（学名: Pseudocydonia sinensis）は、バラ科カリン属の落葉高木。中国を原産とし、日本へは薬用や果樹として渡来した。同科のマルメロと果実がよく似ている。

名称

和名「カリン」は、材の木目が唐木の花櫚（かりん、花梨とも書く）に似ていることに由来する。属名のPseudocydoniaは「偽のマルメロ」の意味。

別名として、カラナシ、カリントウ、アンランジュ（安蘭樹）、アンラジュ（菴羅樹）などがある。「菴羅」はマンゴーの別名だが、古い日本では誤ってカリンを指すことがあった。長野県諏訪地方では、マルメロを「かりん」と呼ぶ。

果実は生薬名を和木瓜（わもっか）という。ただし、和木瓜をボケやクサボケとする説や、カリンを木瓜（もっか）とする説もある。木瓜はボケの果実を指す。日本薬局方外生薬規格ではカリンの果実を木瓜として規定している。

中国語では「木瓜」が標準名で、他に「榠樝」（めいさ）、「榠楂」、「木李」、「木瓜海棠」、「光皮木瓜」、「香木瓜」、「梗木瓜」、「鉄脚梨」、「万寿果」などの名称がある。「木瓜」はボケ類やパパイアを意味することもある。

分類

かつてはボケ属に分類されていたが、カミロ・カール・シュナイダーが1属1種のカリン属を提唱し、分子系統学的にも確認された。カリン属に最も近縁なのはマルメロ属とカナメモチ属であり、次いでナシ亜連の他の属（ボケ属、リンゴ属、ナシ属など）となる。マルメロ（学名：Cydonia oblonga）は同科別属の植物で、果実も似ているが、カリンとは異なる。

漢名の「木瓜」や「万寿果」は、パパイア科のパパイア（番木瓜）と混同されることがあるが、全くの別種。また、マメ科のカリン（花梨）も同名異種である。

分布・生育地

原産地は中国東部で、日本では東北地方以南の本州、四国、九州で植栽される。日本への伝来時期は不明だが、江戸時代に中国から渡来したという説がある。

特徴

落葉広葉樹の小高木から中高木。成木の樹皮はなめらかで、緑色を帯びた茶褐色。一年枝は赤褐色で無毛。

葉は互生し、長さ3 - 8cmの倒卵形ないし楕円状卵形。葉縁に細鋸歯がある。秋には黄葉し、赤色や紫褐色を帯びることもある。

花期は3 - 5月頃で、新葉とともに白や淡紅色の花を枝先に咲かせる。

果実は大型のナシ状果で、長さ10 - 15cmの楕円形または倒卵形。10 - 11月に黄色に熟す。熟した果実は芳香を放つ。果肉は固く、渋くて石細胞が多いため、生食はできない。

冬芽は半円形で小さく、褐色の芽鱗に包まれている。

マルメロは果実が球形で表面に綿毛が密生しているのに対し、カリンは洋ナシ型で綿毛がないことで区別できる。

栽培・生産

涼しい気候を好み、日本では長野県などで栽培が盛ん。成長が早く、日当たりの良い適湿地を好む。植栽適期は12 - 3月。

長野県諏訪市、箕輪町や香川県まんのう町が主な生産地。中国では陝西省白河県が有名で、「白河木瓜」として地域ブランドになっている。

利用

庭木として栽培されるほか、果実は砂糖漬け、ハチミツ漬け、コンポート、果実酒などに利用される。加熱すると渋みが消え、果肉は鮮やかな赤色に変わる。

果実には糖分、脂質、たんぱく質、リンゴ酸、灰分、ビタミンC、ビタミンE、苦味質、精油、クエン酸、サポニンなどが含まれる。果実酒や砂糖漬けは咳止めに効果があるとされ、のど飴にも配合される。

その他

薬用

果実は榠樝（めいさ）と称して薬用にする。民間療法では咳止め、吐き気に利用する。中国では酔い覚まし、痰切り、順気、下痢止めの効用があるとされる。

木材

材は比較的かたくて緻密で、額縁、彫刻材などに利用される。

文化

花言葉は「努力」「唯一の恋」。「カリン」の語呂合わせで「金は貸すが借りない」の縁起を担ぎ、庭に植える風習がある。

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