カルタヘナの海戦 (1758年)

カルタヘナの海戦：七年戦争における英仏の激突

カルタヘナの海戦は、1758年2月28日にスペインのカルタヘナ沖で繰り広げられた海戦です。七年戦争の最中、ヘンリー・オズボーン率いるイギリス艦隊が、ミシェル＝アンジュ・デュケーヌ・ド・メネヴィル率いるフランス艦隊を撃破しました。この勝利は、イギリス軍による北アメリカのルイブール要塞包囲戦に大きく影響を与えました。

背景：地中海を巡る英仏の駆け引き

1756年、フランスはトゥーロンから遠征隊を派遣し、ミノルカ島を占領しました。しかし、その後フランス艦隊は18ヶ月間、トゥーロンに停泊したまま動かず、その間、イギリス艦隊がジブラルタルを拠点に地中海の出口を封鎖していました。

1757年、イギリス軍は北アメリカのルイブールに遠征しましたが、フランス艦隊による補給を阻止できず失敗に終わりました。翌年もフランスは同様の策を講じ、ブレスト艦隊を派遣してルイブール周辺のフランス軍を増強しようとしました。同年11月、ジャン＝フランソワ・ド・ラ・クルー＝サブラン率いるフランス艦隊15隻がトゥーロンを出港しましたが、嵐に遭遇し、中立国であったスペインのカルタヘナ港に避難しました。イギリス艦隊のヘンリー・オズボーンは、フランス艦隊をカルタヘナ港内に封鎖しました。

オズボーンは、フランス海軍が地中海から脱出するのを阻止するよう命じられており、ミシェル＝アンジュ・デュケーヌ・ド・メネヴィル率いるフランスの戦列艦3隻がトゥーロンからラ・クルーの艦隊と合流しようとしているという情報も得ていました。さらに、イギリス船隊の拿捕に失敗したフランス艦2隻がカルタヘナに逃げ込み、ラ・クルーの艦隊に加わりました。

戦闘の経過：イギリス艦隊の追撃とフランス艦隊の苦戦

カルタヘナ沖を巡航していたオズボーン率いるイギリス艦隊は、接近してくるデュケーヌの艦隊を発見しました。デュケーヌは、イギリス艦隊が優勢であると判断し、自軍に散開を命じました。オズボーンは、艦隊の大部分をカルタヘナの封鎖に残し、数隻の戦艦を派遣して退却するフランス艦隊を追撃しました。

まず、フランス艦オルフィがイギリスの戦列艦3隻に追いつかれ降伏しました。続いて、フランス艦オリフラムは拿捕を避けるため自ら座礁しました。残ったデュケーヌの旗艦フードロイヤンは逃走を試みましたが、イギリス艦隊は夜通し追撃を続け、モンマスが追いつき攻撃を仕掛けました。激戦の末、モンマスの艦長アーサー・ガーディナーが戦死しましたが、フードロイヤンは降伏し、デュケーヌが捕虜となったことで戦闘は終結しました。

戦闘後：ルイブールの陥落とイギリス海軍の戦略

7月、オズボーンはフランス艦隊が北アメリカへ向かうには時期が遅すぎると判断し、カルタヘナから撤退して補給に戻りました。ラ・クルーも同様に、ルイブールを救う手立てはないと判断し、ジブラルタル海峡を突破せずにトゥーロンへ帰還しました。その結果、ルイブールはイギリス軍に降伏しました。

イギリス海軍は、1756年のミノルカ島陥落により評判を落としていましたが、カルタヘナの海戦での勝利によって汚名返上を果たしました。ミノルカ島の海戦の指揮官であったジョン・ビングは処刑され、彼の旗艦の艦長アーサー・ガーディナーも臆病者と批判されましたが、カルタヘナの海戦で再び艦長として戦死したことで、その疑いは晴れました。

この海戦は、イギリス海軍の海上封鎖戦略の成功例となりました。海上補給の技術が進歩したことで、海上封鎖が海軍の戦術として現実味を帯び、イギリスはその後も海上封鎖を多用しました。

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