カルデア

カルデア：メソポタミア南東部の歴史と文化

メソポタミア南東部の肥沃な地域、カルデアは古代オリエントにおいて重要な役割を果たした歴史的地域です。ユーフラテス川とチグリス川流域に広がるこの地は、紀元前10世紀以降、セム系遊牧民であるカルデア人の移住によって歴史の舞台に躍り出ました。

カルデア人の台頭と新バビロニア王国

カルデア人は紀元前7世紀、新バビロニア王国を建国しました。この王国は、メソポタミアにおける強大な勢力として、周辺地域に影響力を及ぼしました。歴史学では、紀元前6世紀の短命なバビロン第11王朝を、慣習的に「カルデア王朝」「カルデア帝国」「新バビロニア王国」と呼んでいますが、実際には、歴代支配者のうちカルデア人であると確認されているのは最初の数名のみです。最後の支配者ナボニドゥスとその摂政であった息子のベルシャザルの出自は不明で、アッシリア出身という説もあります。カルデア人の居住地は主にバビロニア南部、ユーフラテス川東岸に集中していました。

カルデアという名称

「カルデア」という名称は、当初はユーフラテス川とチグリス川の堆積物が形成した、南北約400マイル、東西約100マイルに及ぶ広大な平原を指していました。しかし、後にメソポタミア南部全域を指す言葉として広く用いられるようになりました。聖書では、アブラハムの出身地がカルデアのウルであると記されており、この地域が古代世界において重要な位置を占めていたことを示しています。

カルデア人と天文学・占星術

古代ギリシア人は、アケメネス朝ペルシアによる支配以前のバビロニア支配階級を「カルデア人」と呼びました。彼らは、天文学や占星術において高度な知識を有しており、「カルデア人の知恵」は天文学・占星術と同義でした。そのため、バビロニアの知識階級や祭司階級を指してカルデア人と呼ぶこともありました。ただし、カルデア人がバビロニアにおける最初の定住民だったという考え方は、現在では否定されています。

カルデア人の言語

カルデア人が使用していた言語は、アッカド語のバビロニア方言でした。これはアッシリア・アッカド語と同様、セム語族に属しますが、発音や文字に違いが見られます。その後、アッカド語に代わり、アラム語がメソポタミア全域で広く使用されるようになりました。アラム語は、現在でもイラク周辺のアッシリア人と呼ばれるキリスト教徒（アッシリア東方教会やカルデア・カトリック教会信徒）の母語として、アッシリア現代アラム語、カルデア現代アラム語として生き続けています。

まとめ

カルデアは、メソポタミア南部における歴史的地域であり、新バビロニア王国という強大な勢力を生み出したカルデア人の活動によってその名が歴史に刻まれました。天文学・占星術においても高い知的水準を示したカルデア人は、古代オリエント文化に大きな足跡を残しました。彼らの言語であるアッカド語のバビロニア方言は、後にアラム語に取って代わられましたが、その影響は現代のアラム語話者コミュニティにまで及んでいます。カルデアの歴史と文化を理解することは、古代オリエント世界全体の理解を深める上で非常に重要です。

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