ナボニドゥス

ナボニドゥス：新バビロニア最後の王

ナボニドゥス（紀元前？ - 紀元前539年）は、新バビロニアの最後の王（在位：紀元前555年 - 紀元前539年）です。アラム系の出自であるとされ、アッカド語ではナブー・ナイド（Nabû-nā'id）と表記されます。

歴史的評価

ナボニドゥスの治世に対する現代の認識は、彼よりも後の時代、特にペルシア人やギリシア人による記述に大きく影響を受けています。そのため、近代・現代の学問においては、否定的に描かれることが少なくありませんでした。しかし、近年、証拠の蓄積と史料の再評価が進み、ナボニドゥスや彼の治世に対する評価は変化しつつあります。

出自

ナボニドゥスの出自は明確ではありません。彼は自身の碑文で、自らを「取るに足らない出自」と述べています。母親であるアッダ・グッピも、ハランの月神シンの神殿に関係があったようですが、彼女の碑文にも家系に関する記述はありません。彼がアッシリア人の血を引いている可能性も指摘されていますが、確証はありません。

治世

ナボニドゥスは、相次ぐ王位交代で混乱していた新バビロニアの王座に就きました。彼は、勢力を増していた神官たちに対抗するため、神殿の人事に介入し、監督官を派遣して統制を図りました。また、月神シンを祀る神殿を多数建設しましたが、主神マルドゥクを信仰するバビロニア人の反応は芳しくなかったようです。彼はバビロンの過去に強い関心を持ち、古代の建築物を発掘し、その成果を博物館に展示しました。彼は史上初の考古学者の一人とも言われています。

ナボニドゥスは、月神シンを他の神々よりも優先して崇拝し、ハランにあるシンの神殿に特別な奉納をしました。このことが、バビロニアの主神マルドゥクを軽んじていると受け止められ、宗教的な緊張を生み出しました。彼は治世の初期に首都を離れ、アラビアのオアシス都市タイマへ逃れ、10年近く滞在しました。その間、皇太子ベルシャザルに国内統治を委ねましたが、ナボニドゥスの影響力は依然として強く、ベルシャザルは王を名乗ることは許されませんでした。

ペルシアの侵攻とバビロン陥落

ナボニドゥスの治世は、アケメネス朝ペルシアの勢力拡大により終焉を迎えます。バビロンの陥落については、様々な記述が残っていますが、バビロニア年代記によれば、ペルシア軍はオピス付近でバビロニア軍を破り、シッパルを陥落させました。ナボニドゥスはバビロンへ逃れましたが、ペルシア軍は首都を急襲し、ナボニドゥスを捕らえました。これにより、新バビロニアは滅亡しました。

ナボニドゥスの死

ナボニドゥスの最期については、正確な記録が残っていません。カルマニア（現在のイラン領ケルマーン州）で生きることを許されたという説や、殺害されたという説があります。

考古学者としての功績

ナボニドゥスは、史上初の考古学者として知られています。彼は、メソポタミアの太陽神シャマシュの神殿や、ハランの月神ナラム・シンの聖所などの発掘を指揮し、修復を行いました。また、ナラム・シンの神殿を発掘する中で、その年代を特定しようと試みました。彼の年代推定は、現代の基準からすると誤差がありますが、当時の技術水準としては非常に優れたものでした。

宗教的信条

ナボニドゥスが個人的に月神シンを崇拝していたことは明らかですが、その傾倒の度合いについては、学者の間でも意見が分かれています。彼が他の神々や宗教にも敬意を払っていたことから、他のバビロニアの支配者と変わらなかったとする意見もあります。

タイマ滞在の謎

ナボニドゥスが長期間タイマに滞在した理由は、依然として謎に包まれています。経済的な利益を求めてアラビアの通商路を押さえるためだったという説や、月神シンへの傾倒に反発するバビロンを離れたかったという説があります。

参考文献

The Ancients in Their Own Words - (Michael Kerrigan、Natascha Spargo、Joe Conngally、Michael Spilling, 2010)

関連項目

ナボニドゥスの円筒形碑文
ナボニドゥスの年代記
オピスの戦い
en:Addagoppe of Harran
ハッラーン
* ニトクリス (バビロン)

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