カルディア (トラキア)

カルディアの歴史

カルディア（希: Kαρδία）は、トラキアのケルソネソス地域、現在のゲリボル半島に位置していた古代の主要な町です。この町は、メラス湾、現在のサロス湾にあたるところの岬に作られました。カルディアはもともとミレトスやクラゾメナイによる植民地でありましたが、紀元前6世紀後半、小ミルティアデスの時代にはアテネからの入植者を受け入れるようになりました。この影響により、カルディアはアテネの文化や政治の影響を受けることとなります。

しかし、カルディアは常にアテネ寄りの立場を取ったわけではありません。紀元前357年、アテネがケルソネソス周辺の支配権を握った際、カルディアはトラキア公の支配下にあり、中立を貫くことに成功しました。この年、カルディアはマケドニア王ピリッポス2世と友好条約を締結し、政治的な独立性を維持しました。ところが、その後の紀元前343年には、アテネの傭兵隊長ディオペイテスがアッティカから移民をカルディアに連れてきたことが、町の運命を大きく変えることになります。

ディオペイテスの移民受け入れ要請に対し、カルディアは難色を示しました。この拒否に対してピリッポス王は迅速に救援を送ると共に、移民とカルディアの間で調停を試みましたが、アテネ側はこれを拒絶しました。これにより、カルディアはさらなる緊張を迎えることとなったのです。

その後、紀元前309年頃に町はリュシマコスによって破壊されました。再建されたものの、かつてのような繁栄を取り戻すことはできませんでした。この原因は、リュシマキアという新しい町が近くに建設され、カルディアの住民がその地に移住させられたことにありました。リュシマキアはやがて、この地域の主要な都市としての地位を確立し、カルディアはその影に隠れる形となりました。

興味深いことに、カルディアはアレクサンドロス大王の将軍であるエウメネスと歴史家のヒエロニュモスの生まれ故郷でもあります。彼らはカルディアの歴史において重要な人物であり、その功績は後世に語り継がれています。カルディアの歴史は、古代の政治的対立、移民問題、文化の交流を象徴する舞台となっています。

この町は単なる古代の遺跡ではなく、歴史的な人々や出来事との関わりを通じて、豊かな物語を持っています。カルディアの名は、古代ギリシャの歴史において重要な位置を占めており、現代においても学びの対象として関心を集め続けています。

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