ミルティアデス

ミルティアデス：マラトンの英雄と悲劇の最期

紀元前5世紀のアテナイを舞台に活躍したミルティアデスは、アテナイの将軍であり、マラトンの戦いで輝かしい勝利を収めた英雄として歴史に名を残しています。しかし、その生涯は栄光のみならず、悲劇的な最期も刻み込まれています。本稿では、彼の波瀾万丈な人生を詳細に探ります。

ケルソネソスの僭主からアテナイの将軍へ

ミルティアデスはアテナイに生まれ、父はキモンという人物でした。キモンはペイシストラトス一族によって暗殺されましたが、ミルティアデス自身は一族から厚遇され、その後、兄弟の死によってケルソネソスの僭主の地位を継承しました。

ケルソネソスの僭主として、ミルティアデスはレムノス島を征服するなど、幾つかの功績を残しました。しかし、イオニアの反乱を機に、彼はアテナイに帰還します。これは、フェニキア軍の接近を察知したためだと考えられています。アテナイに戻ったミルティアデスは、反ペルシアを掲げ、政治的な闘争に巻き込まれます。親ペルシア派と目されたアルクメオン一族からの訴追を受けましたが、無罪判決を得て、アテナイ民会で将軍に選出されました。

マラトンの戦いと英雄の称号

紀元前490年、ギリシアとペルシアの衝突は避けられないものとなりました。ペルシア軍はマラトンに上陸し、アテナイは存亡の危機に瀕していました。この戦いで、ミルティアデスはアテナイ軍を率いてペルシア軍と対峙します。彼の卓越した戦略とアテナイ軍の勇猛果敢な戦いぶりが相まって、ペルシア軍は壊滅的な敗北を喫しました。このマラトンの戦いの勝利は、ミルティアデスをアテナイの英雄として祭り上げ、彼の名は後世に語り継がれることになります。

パロス島遠征の失敗と悲劇的な結末

マラトンの勝利から数年後、ミルティアデスはパロス島遠征を強行します。しかし、この遠征は失敗に終わります。この失敗は、ミルティアデスを訴追へと導きます。告発者はペリクレスの父であるクサンティッポスでした。民会で「アテナイ民衆への欺瞞」という罪状で訴えられたミルティアデスは、死刑を求刑されました。しかし、かつての英雄への情状酌量もあり、死刑は免れましたが、巨額の罰金50タラントンを支払うこととなりました。

しかし、罰金の支払いが完了する前に、ミルティアデスは獄中で死亡しました。死因は腿の壊疽と伝えられています。この負傷は、パロス島遠征での出来事が原因であるという説も存在します。神罰を受けたという伝承も残されているほどです。

結論

ミルティアデスの生涯は、英雄としての栄光と、政治的陰謀、そして悲劇的な最期が織りなすドラマに満ちていました。マラトンの英雄として讃えられた一方、パロス島遠征の失敗によって、栄光から転落し、獄死するという悲劇的な最期を迎えた彼の生涯は、古代アテナイの政治と軍事の複雑さを改めて私たちに突きつけます。彼の功績は永遠に称えられるべきですが、同時に、彼の最期は権力と政治の残酷さを物語っていると言えるでしょう。

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