カルメン純情す

映画『カルメン純情す』

『カルメン純情す』（カルメンじゅんじょうす）は、1952年に松竹大船撮影所によって制作された日本映画で、木下惠介が監督を務めています。この作品はモノクロ映画であり、日本初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』の続編となっています。この作品では、ストリッパーであるカルメンと芸術家の複雑な恋愛を中心に、日本が独立に向かう直前の社会情勢を風刺する喜劇的な要素が取り入れられています。音楽にはジョルジュ・ビゼーの『カルメン』が使用されており、また「画面が傾く」といった独特のカメラワークが特徴的です。本作はキネマ旬報のベストテンにおいて第5位に選ばれ、後にDVDとしてリリースされました。

あらすじ

物語は、東京・浅草に戻ってきたカルメンが「踊り子」としての仕事を再開するところから始まります。彼女の元に、生活が苦しい友人の朱美が赤ん坊を連れてやって来ます。経済的な困難を抱える二人は、赤ん坊を資産家の元に預ける決断をしますが、やがて思い直し、子どもを迎えに戻ります。そこで出会ったのは、赤ん坊を預かっていた芸術家の須藤一（すどう はじめ）です。アトリエに招かれたカルメンは須藤の芸術に触れ、感銘を受けてヌードモデルとしての仕事を引き受けることになります。

その後、彼女は須藤の性格に振り回されることになります。須藤は女癖が悪く、家庭の財産を無駄遣いしてしまうような男であり、さらに、千鳥という女性との結婚を約束している問題も抱えています。須藤は千鳥の母である熊子夫人に「おなごのための講演会」に呼ばれるなど、彼の周りには常に複雑な人間関係が存在しています。

スタッフ

• - 監督・脚本: 木下惠介
• - 製作: 小倉武志
• - 撮影: 楠田浩之
• - 音楽: ジョルジュ・ビゼー、黛敏郎、木下忠司
• - 美術: 浜田辰雄
• - 編集: 杉原よ志
• - 照明: 豊島良三
• - 録音: 大野久男
• - 助監督: 川頭義郎、松山善三
• - 録音助手: 西崎英雄

キャスト

• - リリー・カルメン: 高峰秀子

浅草で働くストリッパーで、芸術家たちとの関わりに情熱を注ぐ。

• - 須藤一: 若原雅夫

前衛アーティストで、女性関係が複雑。

• - 千鳥: 淡島千景

須藤の婚約者で、彼に翻弄される。

• - マヤ朱美: 小林トシ子

カルメンの友人で、共に困難を乗り越えようとする。

• - 佐竹熊子: 三好栄子

保守系政治家で、物語に陰を落とすキャラクター。

彼女たちの人間関係や対立が描かれ、ストーリーは一層複雑さを増していきます。また、作品の中では政治や社会についても考えさせる要素が多く盛り込まれており、観る者に深いメッセージを残しています。

この映画は、単なる恋愛映画ではなく、戦後の日本の社会情勢に対する鋭い視点や、そこで生きる人々の苦悩が巧みに描かれていることから、今なお多くの映画ファンに愛され続けています。

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