若原雅夫

若原雅夫（わかはら まさお）

1917年1月1日生まれの日本の俳優。1940年代から1950年代前半にかけて、その甘いルックスから「和製シャルル・ボワイエ」と呼ばれ、数多くの映画作品で主演を飾りました。

生い立ち

若原雅夫は、東京市牛込区で1917年1月1日に生まれました。父は映画館を経営しており、幼少期から映画に親しむ環境で育ちました。幼少期は東京、北海道小樽市、福島県郡山市などを転々としましたが、小学校入学を機に東京に戻り、学生時代を過ごしました。小学校4年生の頃に猛勉強を開始し、優秀な成績で市立二中に入学しました。

新興キネマでの俳優デビュー

大学進学を志望していた若原でしたが、家業の不振により経済的な援助が受けられなくなったため、叔父の紹介で日清生命のエレベーターボーイとして働きながら学費を稼ぎました。苦しい生活の中、早稲田第一高等学院に入学しました。在学中に新興キネマの俳優募集に応募し、合格。俳優学校での研修を経て1936年に新興キネマに正式入社しました。エキストラ出演を経て、1940年公開の『荒野の妻』で初主演を果たし、注目を集めました。

大映での活躍

新興キネマ時代に21本の映画に出演後、大映に移籍。『誰か故郷を想わざる』、『南進女性』などの作品で主演を務めました。戦後初の接吻シーンを描いた『或る夜の接吻』や、『修道院の花嫁』、『花咲く家族』など、話題作にも多く出演。水戸光子、原節子、高峰三枝子といった人気女優と共演し、二枚目スターとしての地位を確立しました。

松竹時代

1949年、松竹と専属契約を結びました。高峰三枝子との共演作『別れのタンゴ』、『情熱のルムバ』は音楽映画として大ヒット。永井隆の著書を映画化した『長崎の鐘』では、主人公の永井隆を演じ、高い評価を得ました。また、日本初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』に続く2作目として制作された『夏子の冒険』も話題となり、1952年度の日本配給総収入ランキングで第4位を記録する大ヒットとなりました。

フリーランスへ、そして引退

1954年に松竹を退社しフリーに。日活、東宝などの作品で助演を務めました。テレビの普及に伴い、テレビドラマにも多数出演しました。1973年に肺炎を患い、俳優活動を休止。事実上の引退となりました。

引退後の生活と悲劇

芸能界引退後は、大阪でクラブやステーキハウスを経営していました。1985年、一人息子が日本航空123便墜落事故で亡くなるという悲劇に見舞われました。事故後、若原は遺族団体の代表幹事を務めました。

評価

監督の田中重雄は、若原の真面目な人柄と努力を高く評価しています。当初は上原謙のイミテーションと見られていた若原ですが、終戦後、その個性が開花し、同世代の俳優の中では抜きんでた存在となりました。評論家の小林勇吉は、若原が新興キネマという、当時一流とは見なされていなかった会社に所属していたことが、ハンデキャップになっていたと指摘しています。また、映画制作担当者の小倉武志は、1950年代の若原の仕事ぶりを「無計画」と評しましたが、その一方で彼独特の二枚目としての個性が人気を博したと述べています。若原自身は『長崎の鐘』と『春の潮』を自身の代表作として挙げています。

人物

『長崎の鐘』の撮影中には、永井隆と面会し、その人柄に感銘を受けたと伝えられています。
若原は、1949年のインタビューで、自身の俳優人生を振り返り、より良い俳優になるために努力を重ねたいという意欲を語っています。

主な出演作品

映画

荒野の妻 (1940)
誰か故郷を想わざる (1940)
或る夜の接吻 (1946)
花咲く家族 (1947)
時の貞操 (1948)
別れのタンゴ (1949)
長崎の鐘 (1950)
夏子の冒険 (1953)

テレビドラマ

おかあさん
影のない女
屋根の下に夢がある
寒い朝
純白の夜
愛のうず潮
結婚作戦
ちょっとまってパパ



若原雅夫は、その甘いルックスだけでなく、真摯な演技で観客を魅了しました。彼の出演作品は、日本の映画史において重要な位置を占めています。

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