カルロス・オルチス

プエルトリコが生んだ偉大なボクサー、カルロス・オルチス（Carlos Ortíz）は、1936年 9月9日に生まれ、2022年 6月13日に85歳でその生涯を閉じました。彼はプロキャリアを通じてスーパーライト級とライト級の二つの階級で世界王者の栄冠に輝き、ボクシング史にその名を刻んでいます。

若き日の挑戦

幼い頃にプエルトリコからアメリカ合衆国のニューヨークへ移り住んだオルチスは、貧しい家庭を支えるため新聞配達をしながら、12歳でボクシングを始めます。アマチュアで腕を磨いた後、18歳を迎えた1955年2月14日にプロとして第一歩を踏み出しました。

プロのリングで着実に勝利を重ねたオルチスは、1959年にはライト級で世界ランキング1位にまで上り詰めましたが、当時のライト級王者ジョー・ブラウンはオルチスとの対戦を避ける傾向にあり、世界挑戦の交渉は難航しました。この状況を打開するため、マディソン・スクエア・ガーデンのマッチメイカーであったテディ・ブレンナーは、廃止されていた世界スーパーライト級王座を復活させるという妥協案を提案します。オルチス自身はその権威を疑問視しながらも、世界タイトルへの道としてこの提案を受け入れました。そして1959年6月12日、過去に敗れた経験のある強豪ケニー・レーンとの王座決定戦に勝利し、スーパーライト級の世界王者となります。しかし、本来の目標であったライト級への思いが強かったため、スーパーライト級での防衛戦に対するモチベーション維持には苦労したと伝えられています。

ライト級への渇望と苦難

スーパーライト級王者として2度の防衛に成功した後、1960年6月15日に行われた3度目の防衛戦で、イタリアの技巧派ボクサー、デュリオ・ロイと対戦しました。この初戦は判定で勝利を収めますが、約2ヶ月半後にイタリアで行われた再戦では、終始積極的に攻め続けたにもかかわらず、僅差の判定で敗れ、王座を失います。さらに1961年5月10日、再び敵地イタリアでロイとの三度目の対戦に挑みますが、ポイントアウトされ判定負けを喫しました。この3度目の敗戦を機に、オルチスはスーパーライト級に見切りをつけ、本来目指していたライト級へ階級を戻すことを決意します。

念願のライト級王座獲得と長期政権

ライト級転向後、念願だったライト級での世界王座挑戦の機会が1962年4月21日に訪れます。相手は、かつてオルチスが挑戦を熱望し、交渉が難航した名王者ジョー・ブラウンでした。この一戦でオルチスはKOこそ奪えなかったものの、終始果敢に攻め続け、明確な判定勝ちを収め、見事2階級制覇を達成しました。

王者となったオルチスは、日本へも遠征し、1962年11月7日にはノンタイトル戦で日本のフェザー級王者・高山一夫に大差の判定で勝利しています。ライト級王座の初防衛戦は1963年12月3日、日本の小坂照男を退け、その後もフィリピンのフラッシュ・エロルデやケニー・レーンといった強豪を退け、4度の防衛に成功します。しかし、1965年4月10日の5度目の防衛戦で、パナマのイスマエル・ラグナにアウトボクシングされて判定負けを喫し、王座を失いました。

王座奪還と輝かしい防衛ロード

王座陥落からわずか7ヶ月後の1965年11月13日、オルチスはラグナとの再戦に臨みます。この試合では一転してオルチスがラグナを圧倒し、判定で勝利を収め、見事世界王座を奪還しました。再びライト級の頂点に立ったオルチスは、「殺人パンチャー」の異名を持つ強打者シュガー・ラモスをはじめ、フラッシュ・エロルデ、そしてイスマエル・ラグナといった強敵を再び退けながら、5度にわたって王座を防衛し、長期政権を築きました。

終焉と功績

9度目の防衛を目指した1968年6月29日、ドミニカ共和国のカルロス・テオ・クルスと対戦し、15回の激闘の末、判定負けを喫して王座から陥落します。その後、再び世界王座に挑戦する機会は訪れず、1972年9月20日、スコットランドのケン・ブキャナンに敗れた試合を最後に、プロボクサーとしてのキャリアに終止符を打ちました。引退後、オルチスはその功績が認められ、国際ボクシング名誉の殿堂博物館や世界ボクシング殿堂入りを果たしています。

獲得タイトル

WBA世界スーパーライト級王座（防衛2度）
WBA世界ライト級王座（1度目防衛4度、2度目防衛5度）
* WBC世界ライト級王座（1度目防衛4度、2度目防衛5度）

もう一度検索