フラッシュ・エロルデ

ガブリエル“フラッシュ”エロルデ：閃光の軌跡

ガブリエル・エロルデ、そのリングネーム「フラッシュ」は、リング上で見せた閃光のような速さと華麗なテクニックをそのまま表していました。1935年 3月25日にフィリピンで生まれた彼は、プロボクサーとして世界の舞台で輝きを放ち、特に1960年代のボクシング界にその名を刻みました。彼は元WBAおよびWBC世界スーパーフェザー級王者であり、その階級で前例のない長期政権を築いた偉大な王者として記憶されています。

エロルデのプロキャリアは1951年6月16日に始まりました。デビューからわずか4ヶ月後の10月16日に初黒星を喫するまで、彼は9連勝を記録しています。キャリア初期にはフィリピン国内や東洋のタイトルを巡る戦いに身を投じました。1952年7月26日にはフィリピンバンタム級の王座を獲得し、一度防衛した後、その座を明け渡しています。同年10月18日には、堀口宏を破って空位だった東洋バンタム級王座を手に入れました。この東洋王座も防衛を果たした後、返上しています。

階級を上げた彼は、1953年5月20日にラリー・バターンの持つ東洋フェザー級王座に挑みましたが、獲得は叶いませんでした。日本でも秋山政司の日本ライト級王座に挑戦しましたが、ここでも敗れています（1953年11月25日）。さらに、1954年6月29日には再び東洋フェザー級王座に挑戦するも、金子繁治に退けられるなど、上位タイトルへの挑戦では苦戦も見られました。

しかし、同年8月18日にはフィリピンスーパーフェザー級王座を獲得し、国内での地位を確立しました。1955年7月20日には、ノンタイトル戦ながら当時世界フェザー級王者だったサンディ・サドラーを判定で破る金星を挙げています。翌1956年1月18日にはサドラーの世界王座に挑戦する機会を得ましたが、13ラウンドTKOで敗れ、世界王座獲得はなりませんでした。

1957年にはOBF東洋ライト級王座を獲得しますが、初防衛に失敗してしまいます。しかし、1958年3月2日にはかつて自分を破ったオムサップ・ラエムファバーから王座を奪った大川寛を破り、このタイトルを再び手に入れました。

そして1960年3月16日、ガブリエル・エロルデのキャリアは最大の転換期を迎えます。7ラウンドで王者ハロルド・ゴメスをノックアウトし、世界[スーパーフェザー級]]王座を獲得したのです。これは当時全米ボクシング協会(NBA)が初めて認定した同級の世界王座でした。1963年2月14日には世界ボクシング評議会]も彼を同級王者として認定し、彼は[[統一世界王者となりました。

この世界スーパーフェザー級王座を、エロルデは実に7年3ヶ月にわたって保持しました。その間、彼は10度にわたる防衛に成功し、1960年代におけるスーパーフェザー級の絶対的な王者として君臨しました。その防衛戦は日本のリングでも行われ、多くの日本人ボクサーが彼に挑みましたが、その度にエロルデの壁の前に屈しました。

世界王座保持中も、彼はOBF東洋ライト級王座も並行して防衛していました。1962年4月30日には小坂照男に敗れて東洋ライト級王座を失いますが、わずか3ヶ月後の8月4日には小坂からその座をすぐに奪還するなど、衰えを知らない強さを見せつけました。

しかし、階級の壁は厚いものでした。1964年2月15日と1966年11月28日には、当時のWBA・WBC世界ライト級王者カルロス・オルチスに二度挑みましたが、いずれもKO負けを喫し、2階級制覇は実現しませんでした。

長期政権にも終わりは訪れます。1966年6月9日にはOBF東洋ライト級王座を沼田義明に奪われ、そして1967年6月15日、再び沼田義明との対戦で、ついにWBA・WBC世界スーパーフェザー級の両王座から陥落しました。

王座を失った後も、エロルデはリングに上がり続けましたが、往年の輝きを取り戻すことはできませんでした。1971年5月20日、日本で行われた村上広行との10回戦で判定負けを喫した試合を最後に、彼はリングを去ることを決意しました。

現役引退後はボクシングのプロモーターとして後進の育成や興行に尽力しましたが、喫煙習慣が原因で肺癌を患い、1985年 1月2日に49歳という若さでこの世を去りました。

ガブリエル“フラッシュ”エロルデの功績は、死後も正当に評価されています。1993年には国際ボクシング名誉の殿堂博物館に殿堂入りを果たし、その偉大さが世界的に認められました。フィリピンには彼にちなんで「フラッシュ」の異名を持つ後輩王者ノニト・ドネアがおり、エロルデのレガシーは脈々と受け継がれています。また、孫のフアン・マルティン・エロルデもプロボクサーとして活躍しており、エロルデ家はフィリピンボクシング界に深く根差しています。

彼の「閃光」のようなスピードと堅実なボクシングは、今なお多くのファンの心に残り、フィリピンボクシング史上最高のボクサーの一人としてその名前は語り継がれています。

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