カルロ・ゴルドーニ

カルロ・ゴルドーニ

カルロ・オズヴァルド・ゴルドーニ（Carlo Osvaldo Goldoni）は、1707年2月25日にヴェネツィア共和国で生まれ、1793年2月6日にパリでその生涯を終えた劇作家であり、オペラのリブレット作家でもありました。

生涯

ヴェネツィアで医師の子として生まれたゴルドーニは、パドヴァ大学で法律を修め、後にパヴィア大学を卒業しました。その後、北イタリアの各地を巡りながら、並行して劇作に手を染めるようになります。1748年、彼は弁護士の職を辞し、メデバック劇団の座付き作家となりました。この時期、彼は斬新な視点を取り入れた喜劇を次々と発表し、演劇界に改革の波をもたらしました。1753年にはサン・ルーカ劇場（現在のゴルドーニ劇場）へと活動の場を移しますが、新しい時代の息吹を反映した彼の作品は、当時の観客の一部には必ずしも好意的に受け入れられませんでした。さらに、保守的な劇作家であるキアーリやゴッツィらからの誹謗や攻撃の標的となり、失意のうちにフランスへの渡航を決意します。これはパリのイタリア劇団からの招きによるものでした。1764年にはフランス国王ルイ15世の招請に応じ、ヴェルサイユ宮殿で王女たちにイタリア語を教えることになります。しかし、フランス革命が勃発し、彼はパリへと退きました。そして、革命の最中であった1793年2月6日、パリにて85歳でこの世を去りました。

作品と評価

ゴルドーニは生涯に二百数十本の喜劇を創作しました。彼はこれらの作品を通じて、故郷ヴェネツィアに暮らす庶民の姿を描き続け、その中に広く共通する人間の感情や本質の真実を写し取ろうと努めました。彼の描く民衆は、伝統的なコメディア・デラルテの定型的な仮面キャラクターとは異なり、仮面を外した「素顔」で捉えられ、その生々しさや時に見られる猥雑さよりも、むしろ明るい生命力に満ちています。これは、衰退期にあった貴族たちの無為で怠惰な姿とは対照的に描かれました。当時の旧体制下においては、楽観主義者として評価されることもありましたが、彼の喜劇は根底にある善意と健全な良識に支えられていました。コメディア・デラルテが持つ卑俗な要素や、仮面によって固定された人物像からの脱却は、彼の作品に画期的な生命を与え、イタリアにおける近代劇の誕生に向けた重要な礎となりました。ゴルドーニが遺した傑作の数々は、現代に至るまで世界の様々な舞台で上演され続け、その文学的・演劇的な価値は高く評価されています。

主な作品

• - 二人の主人を一度にもつと（1745年）
• - コーヒー店（1750年）
• - 宿屋の女主人（1753年）
• - おかしな出来事（1755年）
• - 田舎者（1759年）
• - キオッジャ騒動（1762年）
• - 陽気な気むずかしや（1771年）
• - 回想録-わが生活と演劇（1787年）

主な日本語訳

• - 『ゴルドーニ劇場』田之倉稔編訳、晶文社、1983年（「二人の主人を一度に持つと」「ヴェネツィアのふたご」収録）
• - 『ゴルドーニ傑作喜劇集』牧野文子訳、未來社、1984年（「コーヒー店」「扇」収録）
• - 『抜目のない未亡人』平川祐弘訳、岩波文庫、1995年
• - 『ゴルドーニ喜劇集』斎藤泰弘訳、名古屋大学出版会、2007年（全9篇収録）
• - 『珈琲店・恋人たち』平川祐弘訳、岩波文庫、2013年

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