カルロ・デ・メディチの肖像

アンドレア・マンテーニャ「カルロ・デ・メディチの肖像」

アンドレア・マンテーニャによって描かれた『カルロ・デ・メディチの肖像』は、初期イタリア・ルネサンス絵画を代表する作品の一つです。板にテンペラで描かれたこの肖像画は、その卓越した描写力と歴史的背景から、今日まで多くの人々を魅了し続けています。

制作年代と来歴

制作年については、マンテーニャがマントヴァに滞在し、肖像画の制作依頼を受けていた1459年から1460年頃、または、1466年に画家がフィレンツェを訪れた際に制作されたという説があります。当初、この作品はマンテーニャによる原画の16世紀の模写であると考えられていましたが、その厳密な構成と力強い描写から、現在では多くの研究者がマンテーニャ自身の筆によるものと認めています。この作品は現在、フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

絵画の来歴については不明な点が多く、かつてはモデルの人物がマントヴァの司教ルドヴィーコ3世・ゴンザーガであるという説も存在しました。しかし、現在では、コジモ・デ・メディチとチェルケス人の側室との間に生まれた息子、カルロ・デ・メディチを描いたものであるという説が有力です。この説を裏付ける根拠の一つとして、モデルの人物の印象的な青い目が挙げられます。また、1912年には、メディチ家の家系図の中に、この肖像画の複製が含まれていたことが確認されています。

ジョルジョ・ヴァザーリは、カルロの肖像をフィリッピーノ・リッピのフレスコ画『聖ステファノと洗礼者聖ヨハネの物語』に登場する人物の一人であるとしましたが、顔貌が本作とは異なっていることから否定されています。また、マンテーニャへの作品の帰属は近年の研究によるものであり、長らくドメニコ・ヴェネツィアーノの作品であると考えられていました。

作品の特徴

この肖像画では、人物が4分の3正面向きで描かれています。この手法は、15世紀後半に初期フランドル派の画家たちによってイタリアに持ち込まれた革新的なものでした。それ以前は、古代ローマの伝統に従い、横顔で描かれる肖像画が主流でした。

モデルの人物は褐色がかった肌をしており、この点からカルロの母親がチェルケス人ではなくアフリカ系黒人であるという少数説も存在します。カルロは1463年に聖書原典使徒に任命されましたが、この肖像画ではその地位にふさわしい服装を身につけています。作品には内面の心理を描写する要素がほとんどなく、衣服や帽子などの細部に重点が置かれているのは、この作品が公的な肖像画であることによるものと考えられます。

まとめ

アンドレア・マンテーニャの『カルロ・デ・メディチの肖像』は、ルネサンス初期の肖像画における革新的な技法と、歴史的背景を色濃く反映した傑作です。その芸術的価値はもちろんのこと、メディチ家の歴史を語る上で重要な作品として、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

参考文献

ルチャーノ・ベルティ『ウフィツィ』、ベコッチ出版社　ISBN 88-8200-0230
Pauli, Tatjana (2001). Mantegna. Milan: Leonardo Arte. ISBN 978-88-8310-187-8

外部リンク

* ウフィツィ美術館公式サイト、アンドレア・マンテーニャ『カルロ・デ・メディチの肖像』 (英語)

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